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人材流出 社員を繋ぎとめるには

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止まらない人材流出

私の勤め先では、かつて、異動や退職の際には各フロアを挨拶して回るのが慣行になっていました。

 

自己都合退職者が増え、それと相まって中途採用者が増えるに従い、異動などに伴う挨拶回りは古いと避けられるようになり、コロナ禍によって、それは完全に無くなりました。

 

それでも、まめな同僚などからはメールで異動の知らせが送られてきますし、それ以前に社内のイントラで人事異動が公表されるので、会社に顔を出さずとも人の動きは分かります。

 

だいたい人事異動は2か月先くらいまでのものが公表されますが、どうしても私が気になるのは、「自己都合退職」のところです。

 

かつて、自己都合退職と言えば、結婚を機に“寿退社”する女性社員がほとんどを占めていました。今や結婚や出産で退職する女性はほとんどおらず、会社としても有能な社員には残ってもらえるように、休業制度等の充実化を図っています。

 

今、自己都合退職と言えば、そのほとんどは転職者です。

 

仕事で一緒になった人が退職するとなると少なからずショックですが、最近の自己都合退職者に関しては、一度も会話をしたことの無い、顔も思い浮かべることのできない年代の社員がほとんどなので、個人的な驚きと言うものはありません。

 

しかし、私が、人事異動発表で真っ先に確認するのが「自己都合退職」であるのは、私の知らない若手・中堅社員が毎月どれだけ辞めて行くのかを確認するためです。

 

退職者の数は急増するわけではありませんが、それを見ると、毎月ほぼ一定の人数が会社を去っているのが分かります。

 

人材を繋ぎとめるもの

人材流出やそれに対する会社の対応に関しては、これまでにも何度か記事を書きました。会社は、社長と社員が直接対話できる機会を設けたり、若手社員のスキルアップのための社内研修プログラムの充実化を図ったりと、人材を繋ぎとめるための策を講じる努力はしてきました。

 

ただ、それでも自己都合退職者が出続ける様子を見ると、会社が人材流出の歯止めと考える策は、若手の心には刺さっていないのでは無いかと思います。

 

私がまだ管理職だった頃、人事労務制度や採用関係の委員会のメンバーでしたが、その場でも、若手・中堅社員のモチベーションを維持するための方策を議論したことがあります。

 

企業留学や資格取得、社内研修の充実化など、本人のスキルアップを会社が支援する案はいろいろ出ましたが、それだけでは十分では無いことは出席者全員が分かっていました。

 

10年後、20年後の会社はどうなっているのか。その時自分はどのような仕事に携わっているのか。個々人のキャリアパスのための育成プログラムを充実させることは、もちろん大切なことなのですが、その土台としての会社の事業見通しや将来像を示せないことが最大の問題なのでは無いかと、私や他の委員がコメントし、企画部門にその意見は上げられたはずでした。

 

その結果としての社長と社員の公開対話開催でした。経営のトップが一般の社員に話しかける場、そして、現場で働いている者たちの声に直接耳を傾ける機会を設けられたのは、超保守的な会社にとっては画期的なことだったと思います。

 

しかし、そこでも経営陣は会社の将来像やビジョンについて、若い人たちがワクワクするような絵を描けませんでした。

 

給与や福利厚生、社内研修制度。処遇が良ければ良い人材を引き留めることができる、と言う考えは最早通用しません。給料が少しぐらい見劣りしても、自分の将来を考えて転職の道を選ぶ者がいるのです。

 

現に私とペアを組んでいた若手社員は来月転職しますが、給料は少し落ちると本人が言っていました。それにも拘らず彼が会社を去ることを決意したのは、自分の将来像が見えなかったからだと言います。

 

この記事を書いている最中に、私の部署の若手社員がもう一人辞めることが分かりました。営業部門から異動してきたばかりの女性社員で私と一緒に仕事をするはずでしたが、結局は会社を辞めることを選んだようです。直属の上司も彼女とはうまくコミュニケーションが取れず、最後は人事部預かりになったと聞いています。

lambamirstan.hatenablog.com

 

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もっとも、彼女の場合は私の目から見ても特異なケースなのですが、いずれにしても、最近の若手社員は退職・転職の決断が早いのは確かなようです。しかも、彼ら・彼女らを魅了するものは目の前にぶら下がるニンジンでは無く、もっと先の自分の将来像です。若い世代と未来の話が出来なければ、良い人材を保持し続けることも難しい世の中なのだと思います。

 

さて、ペアを組む相手を失ってしまった私ですが、仕事がストップするわけではありません。今のところ一人でこなすだけの余裕はありますが、私の本意としては、法務・契約のスペシャリストを育てることなので、社内に意欲のある若手社員がいれば大歓迎なのです。しかし、有能な社員ほど囲い込みは強く、私の相方が決まるのは、次の定期異動の時期まで待たなければならないようです。