努力することと無理をすること

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働く新人

今年はコロナ禍の影響で、新入社員の入社直後の研修はオンラインで行われました。普通の年なら行われる配属部署での懇親会も無く、在宅勤務で部署の面々とはテレビ会議で会うことがほとんどとなると、本人にしても、配属先の上司や先輩社員にしても、職場に馴染んできたかどうかがいまいち分からない感じだと思います。

 

さて、先日、法務部門に配属となった新人君とテレビ会議システムで話をする機会がありました。稟議書の中身に関する質問だったのですが、担当者も課長も捉まらず、私のところに連絡をしてきたとのこと。

 

モニター越しの会話でしたが、相手の緊張する様子が伝わってきました。もう少しリラックスして話せば良いのにと感じつつも、話の腰を折るのも悪いと思い、相手のペースで話させることにしました。ところがどうも要領を得ません。恐らく、上司から言われて稟議書の内容を確認しに来たのでしょうが、上司の話が理解できていなかったのでしょう。こちらが逆質問すると、途端にしどろもどろになってしまいました。

 

私は意地悪をするつもりも無かったので、次のことを本人に伝えました。「上司の指示が理解できなかったら、理解できるように説明し直してもらうこと」、「人からの指示でも何か質問したり説明したりする時は、自分の言葉に置き換えて話をすること」、そして、「仕事とは言え、緊急性が無ければ、時間外に会社の人間にコンタクトしないこと」。

 

新人君は目の前の仕事に夢中になって周りが見えなくなってしまったのか、上司から週末を潰してでも仕事を片づけるように言われたのかもしれません。いずれにしても、休日にまで仕事をしなければ回らないと言うことであれば、仕事が多過ぎるのか、本人の力量と仕事の内容がマッチしていないのです。

 

無理をしてはいけない時

注意や警告されると、反発心から仕事に燃える者もいれば、委縮して力が出せなくなってしまう者もいます。上司は、それぞれの部下の性格を見て対応を変えなければならないのですが、パワハラなどと言う言葉が存在しない頃には、上司にいびられて精神的におかしくなった社員が少なからず存在しました。

 

今やそんな上司はいないのでしょうが、同時に若い人も打たれ弱くなった気がします。恐らく時代の流れとともに、家や学校で厳しく躾けられたり、指導されたりした経験がほとんど無いのでしょう。私から見ると、「えっ、その程度で?」と言うくらいの、ややきつい言葉で注意されて、会社に出て来られなくなってしまう若手社員がいるのです。

 

それはどちらかと言えば、珍しいケースに含まれるのですが、昭和生まれの社員は、そのようなことが起きると、若手全般を「情けない」とか「ひ弱だ」などと言うことがあります。私はむしろ無理をしない方が安全なのではないかと思えるのですが、私がそのような話をすると、今度は私のことを「情けない」という者が出てきます。

 

時代が変われば、生き方も変わります。上に立つ人間が、今の若い人の考え方を否定してしまうと、そこでお互いに交わることが出来ずに終わってしまいます。

 

若い人々に、自分たちの若い頃の常識を押し付けるのではなく、むしろ、若い人々が何を考えているのか、何を生活のプライオリティーとしているのかを理解することから全てが始まるのではないかと思うのです。

 

時代が変わっても、変わらないことは、何かを達成するためにはそれなりの努力が必要だと言うこと。会社の仕事も然りです。しかし、だからと言って、かつてのように、「寝る間も惜しんでやるのが仕事」と言う考え方は、今の時代には通用しません。努力しなければならないことと、無理をすることは、根本的に違うことだと言うことに、若手を指導する立場の人間が気づかなければ、組織として時代に取り残されるばかりか、存続自体が危ぶまれることになるのではないでしょうか。

 

成果主義の丸投げ

どこの会社も似たり寄ったりだと思いますが、私の勤め先も、バブル崩壊後の就職氷河期で採用を控えたために生じた歪みを抱えています。30代後半から40代の社員の数が少なく、中途採用で何とか穴を埋めようとしても、なかなか有望な人材が定着しません。

 

経験不足の若手社員にその穴を埋めさせるのは、実務の面でも現実的では無く、40代後半から50代の社員がそれをカバーすることとなります。本来、管理職はチームとして集められた社員を統率するのが仕事のはずですが、そうは言っていられず、ほとんどの管理職が今やプレイングマネージャーとなっています。

 

そのようなプレイングマネージャーは、深夜勤務や休日出勤と言う、“多少の負荷”に晒されることには慣れている世代なので、現状は何とか仕事が回っている状態ではあります。

 

しかし、これがいつまで続くのか、続けられるのかというと、そう長くはありません。実際、私も昨年まではプレイングマネージャーとして、自分を胡麻化しながら仕事をしてきましたが、これを自分の次の代に引き継ぐのはまずいと思い、今は、部全体の仕事のクオリティーを落として ‐ 必要最小限の仕事に絞って ‐ 部員が金属疲労を起こさない仕事の仕方を進めています。

 

私の会社に限らず、最近では、「成果主義」と言う言葉がもてはやされていますが、適切な人員配置を真剣に考えることなく、下の者に「成果を上げろ」と発破をかけることしか能の無い経営陣は、ある日、仕事が回らない部署が続出することにショックを受けることになるでしょう。