和尚さんの水飴

老後の前のハッピーアワー

家庭人のススメ

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当たり前のこと

誰かに期待されるというのは嬉しいことです。期待に応えて“ご褒美”がもらえたら、嬉しさも一入です。

 

会社勤めをしていれば、上からの期待に応えることによって、評価が上がり昇進し給料も増えます。会社という集団の中での手柄は - それが正当に評価された結果が否かは別として - 目に見える形で表れるのです。

 

さて、会社から家に帰ると、会社でどんなに立派な成果を上げようと関係ありません。配偶者として、あるいは親として、あるいは両親と同居していれば子供として、家族から期待される存在になります。

 

「いやいや、私は自分の家族から期待なんかされていません」「家にいると迷惑がられています」と言う方がいるかもしれません。しかし、本当にそうでしょうか。思うに、“期待されなくなった”、あるいは“迷惑がられるようになった”というのが本当のところではないでしょうか。

 

例えば、洗い物や掃除、ゴミ出し、子供の世話、買い物・・・。家の用事を挙げればきりがありませんが、家族から何か頼まれたときに喜んで引き受けていますか。仕事で疲れているのだから、家ではリラックスしたい。家のことは家事が得意な人間がやればいい・・・。もし、あなたが家の中で協力的でなければ、家族から当てにされなくなっても不思議ではありません。

 

家に帰ると、夕飯が用意されているのが当然、お風呂が沸いているのが当然、冷蔵庫の中には晩酌のビールが冷えていて当然。その当然のことを誰かがあなたのために行っているのです。

 

「でも、私は家族のために毎日汗水垂らしてお金を稼いでいるじゃないですか」という反論が聞こえてきそうです。共働きのご家庭ではそんな理屈は通りませんね。もし、あなたの稼ぎだけで家庭を支えていたとしても、それは、“当然”のことなのです。あなたも、あなたのご家族も、家を支えるために“当然”のことをしているだけなのです。

 

逆に、仕事から帰ってきた相手に労いの言葉ひとつもかけることもせず、汚れ物を分けて洗濯したり、本人のいないところで子供に悪口を吹き込んだり。それは、相手に自分の気持ちが伝わらない鬱憤を、相手を傷つけることで晴らしているだけなのです。

 

家族はそれぞれの役割を果たすのが当然です。当然のことをやっているだけなので、見返りはありません。しかし、家族の一員として貢献していることを同じ家族に認めてもらいたいという気持ちはあるはずです。

 

家族を笑顔にする方法

夕飯の用意をしても、家族から給料をもらうわけではありません。掃除や洗濯も然り。家族を支えることは当然のことなので、報酬はありません。だからこそ、家族のために何かしてくれた時には感謝の言葉が大切なのです。

 

奥さんや旦那さんが作った料理を食べる時、「ありがとう」とか「美味しかった」とか、相手を労う言葉をかけていますか。家族のための無償の行いだからこそ、感謝や労いの気持ちを言葉で表すことが必要なのです。

 

褒められて嫌な気持ちになる人はいません。自然と笑みがこぼれます。家族から何かしてもらったら「ありがとう」と言ってみましょう。最初は怪訝な顔をされるかもしれませんが、あなたの気持ちが伝わるまでにそう長い時間はかかりません。

 

そして、仕事で忙しい方も、1日にたったひとつでも家族のために“当然”のことをやってみましょう。ほんの些細なことでも構わないのです。食後のテーブルを拭くのでもいいのです。少しずつ、家族に当てにされる存在になれるはずです。

 

あなたの代わりはいくらでいる

「自分がこんなに会社で苦労しているのに、妻も息子も自分に感謝したことなど1度も無かった」 私の部下がこぼした愚痴です。ここまで書いてきたことは、そんな彼の愚痴に対して、私が答えた話が元になっています。

 

聞くと、奥さんと息子さんが実家に戻って2か月。それまで、平日は帰宅途中にひとりで夕食を済ませ、子どもが眠ってから帰宅。風呂に入って寝る。その繰り返しだったそうです。休日はパチンコか家でゴロゴロ。奥さんと息子さん二人で外出しているそうですが、どこに遊びに行っているか知らないとのこと。これでは、家族に感謝される、されないという問題以前の話です。以前の部署では仕事優先で、夕飯はほとんど家で摂らず。奥さんとの会話も無く、家に居づらい状態だったのだそうです。それが習慣となって、帰宅途中の夕食が続いているのだそうです。

 

その部下は、非常に優秀な男です。ただ、気負い過ぎて同僚に煙たがれる嫌いがあるのが玉に瑕です。責任感が強いのか、根っから仕事が好きなのか分かりませんが、とにかくがむしゃらに仕事をします。

 

しかし、どんなに優秀な社員でも、必ず代わりはいます。私の勤め先にも優秀な社員はたくさんいますが、「余人をもって代え難し」と言う社員は見たことがありません。一方、家族の中でのあなたのポジションは替えが利きません。会社に期待される人間と家人に期待される人間。後者の方が重要に決まっています。

 

仕事の出来る部下も、奥さんや息子さんからしてみれば、たったひとりの夫であり父親であったはず。それに気がつかなかったとは、愚かとしか言いようがありません。