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お金を貸してはいけない

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自分のお金にルーズな人間

私が大学生の頃、貸したものが返ってこない同級生 – あえて友人とは呼びません - がいました。本やCDを貸すと、こちらがしつこく催促しないと返ってこない。2度、3度とそのようなことが繰り返されると、そのような相手に自分の物を貸す気など起きなくなります。

 

社会人になって、同僚や上司と飲み歩く機会が増えると、飲み代を借りようとする者が現れます。私は会社に入ってから比較的早くに結婚したので、外で飲むにしても、自分の小遣いが飲み代の上限でした。小遣いが無くなれば、その月は誰から誘われてもつき合うことはしません。

 

ところが、同僚の中には、手持ちの金がないくせに飲みに行きたいと言う者がいました。しかも、事前にそのことを言わずに、店の会計をする段になってから財布が空だから貸してくれと、悪びれもせずに言うのです。しかも、方々から借金を拵えて、こちらが催促するまでお金を返さない。そのような同僚とは二度と付き合うことはしませんでした。私が“ケチ”なだけかもしれませんが、お金の管理がルーズな人間は最も信用できない、と言うのが私の経験則です。

 

飲み代であれば、金額も高が知れています。しかし、そもそも、自分で働いて稼いだお金の価値を知っている人間は、無闇に散財しませんし、不測の事態に備えて蓄えもしています。財布の中身も確認せずに、飲み歩いたり、衝動的な買い物が止められなかったりするのは、性格の問題では無く、病気です。

 

借金をしないと生活が回らくなってしまうと言うことは、生活レベルが自分に相応していないからです。そして、そのような相手にお金を貸したら、返ってくることなど期待すべきではないのです。自分のお金の扱いにルーズな人間が、他人に対して真摯な態度を貫くことなど無理な話です。

 

お金を貸してはいけない

私は一度だけ、大学時代の友人のためにお金を工面したことがあります。当時、結婚して2年目か3年目だったと記憶していますが、その友人から突然会社に電話があり、アパートの更新料が払えずに困っていることと、知り合いを方々回って借金の申し込みをしては断られていることを聞かされました。「1万でも2万でもいいから」。切羽詰まった友人の声から、冗談では無いことは分かりました。

 

他の友人に探りを入れたところ、大学の同級生で親しくしていたグループの間では、その友人がお金を借りに回っていることは知れ渡っていました。私自身は、その友人とはそれほど親しい間柄では無かったことから、仲が良かった他の友人達から断られ続けた挙句に、私のところに来たのだと理解しました。

 

私も決してお金に余裕があるわけではありませんでしたが、初心な私は、友人が困っているのに手を差し伸べないなんてできないと思い、何とか応援できないか妻に相談しました。

 

妻は私の話を聞くと、「そんな理由で友達に借金を申し込むなんて怪しい」、「身内や自分の勤め先からだって借金はできるはず」、「貸したら絶対に返ってこない」と、畳み込むように言いました。私は妻の最後の言葉にカチンと来て、それほど親しいわけでは無かったにも拘わらず、友人のことを「あいつはそんな奴じゃない」と反論しました。

 

結局、妻は私の小遣いの前借りと言う形でなら、友人にお金を貸すことに同意してくれました。そして、もう一度最後に「絶対に返ってこないから」と一言。

 

負け惜しみ

私は、友人に2か月分の小遣いに相当する金額を“援助”しました。当時私が何を考えていたかと言うと、妻と言い合いになった後、冷静さを取り戻すにつれ、妻の言っていることの方が正しいのではないかと思うようになったのでした。一方でそれを否定する自分もいました。

 

友人に対して猜疑心と信用したい気持ちが綯い交ぜになった私は、彼に対して、お金は取っておいてもらって構わないから、友人関係はこれで終わりにすることを一方的に伝えました。

 

もし、友人が私との関係を大切に思うのであれば、私がたとえ返済不要と言っても、お金を返してくるでしょう。私はそう期待しました。

 

ところが、妻の予想どおり、友人はその後お金を返してくることはありませんでした。彼との関係はその程度のものだったのでしょう。もし、私が彼にお金を貸していたとしたら、それは期待どおりに返ってきたのでしょうか。私は、お金が返ってこなかったときの失望感を味わうことを避けていただけなのです。

 

妻は、この話に二度と触れることはありませんでした。私も妻に事の顛末を話したことはありません。何を言っても私の負け惜しみになってしまうからです。

 

私は以来、人にお金を貸すことはありません。お金のやり取りで嫌な気分に浸るくらいなら、その前の段階でしがらみを断ち切ってしまう方が楽だからです。