和尚さんの水飴

老後の前のハッピーアワー

使うお金のメリハリ

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これからの時代の借金

いつの時代も、「一寸先は闇」なのは変わり無いのでしょうが、特に今年ほど ‐ まだ折り返し地点を過ぎたばかりですが ‐ その言葉を強く感じたことはありません。私が就職してからの約30年も山あり谷ありでしたが、今年は、コロナ禍によって働き方が大きく変わったこと、経済の先行き不透明感が一層高まったことから、数年後に振り返ってみると、生き方を見直す転換点だった年になるのではと思っています。

 

さて、先日会社の部下から自宅購入を考えているという話を聞きました。買う時期は、もう少し頭金を貯めて、2~3年後を目途にと言うものでしたが、30年程度のローンを組んで大丈夫かと私に聞きました。

 

私はファイナンシャルプランナーでもありませんし、他所の家の台所事情も分からないので、大丈夫かどうかは分かりません。ところが、的外れな質問を聞き返そうと思ったのと同時に、彼の真意が分かりました。

 

2~3年後ということは、彼も40代に差し掛かります。そこから30年のローンを組むとなると完済時期には彼は70代になっています。彼は、自分が退職し、再雇用嘱託として期間満了となる65歳までうちの会社が生き残っているかどうかを知りたかったのでした。

 

会社の寿命など誰にも分かりません。もし、明日にでも倒産しそうな会社だとしても、それを知っているのは経営陣とコーポレート部門の限られた役職だけです。そう彼に話すと、軽くため息を吐いてうな垂れてしまいました。普通の管理職だったら、会社の寿命を聞かれたら「大丈夫」で押し通すのでしょうか。私は嘘を吐くと顔に出てしまうので、心に思っていることと違うことは極力言わないようにしています。

 

うちの会社に限らず、このご時世、一部を除いて業績が下向きになる企業が多いはずです。もちろん、長い目で見れば、コロナ禍の影響は思ったほど深刻では無かった・・・と言える可能性もあるのでしょうが、コロナ禍のような想定外の事態が無かったとしても、30年~40年存続する会社は案外多くは無いと思います。

 

もちろん、これから先、同じ会社で働き続けることが、かつてほどの価値を持たなくなることを考慮すれば、今勤めている会社の30年後を心配する必要も無いでしょう。それよりも、今後の景気次第では、思い通りの転職が困難になるリスクが高まるわけで、そちらを気にした方が良さそうです。

 

高度成長期で、かつ、終身雇用が守られていた時代なら、どんなに長いローンを組んでも、会社で不祥事さえ起こさなければ、返済の不安要素はほぼゼロに近かったと思います。しかもインフレのお陰で、ローンの負担感は年々軽くなったことでしょう。

 

翻って、今の時代に30年もの長期ローンを組む自信が持てるでしょうか。我々の両親あるいは祖父母の時代とは環境が違い過ぎます。

 

家を買うのも“つもり貯金”

私たち夫婦は、バブル崩壊後しばらくして結婚したのですが、当時、もはや給料が右肩上がりに伸びることなど期待できず、生涯収入がどの程度見込めるのか想像できませんでした。

 

そこで、私たちはローンを組んでまで家を買うことはしないことに決めました。将来、家を買うか、賃貸にするかは決めていませんでしたが、まずは、“ローンを組んだつもりで”将来の住居取得費のための積み立てを始めました。借入元本に当時の一般的な住宅ローン金利を使って、元利均等で毎月の返済額を計算して、それを積み立てて行きました。将来のどこかの時点で家を持たないことに決めれば、積み立ては中止です。

 

あくまでもローン返済のつもりで行なっているわけですから、強制的に積み立てられなければ意味がありません。私の場合は、銀行の積立預金を使いましたが、積み立てられれば、投信でも会社の財形貯蓄でも何でもいいと思います。

 

そんな具合につもり貯金を行うと、実際には外部流出しない支払金利分だけ早く目標額に達することになります。私たちが積み立てを始めた頃の住宅ローンの金利は、今とは比べ物にならないほど高かったため、30年ローンのつもりで積み立てをすると約20年で元本分が貯まりました。

 

現在の住宅ローン金利は低いですが、支払利息は少ないに越したことはありません。自分たちの生活の役に立つコストではないわけですから、目標額の積み立てが無理だとしても、できるだけ頭金を増やして、借入金を少なくする努力はしておきたいところです。

 

使うお金のメリハリ

将来の大きな買い物のために、貯蓄に励むことは悪いことではありませんが、家を持つことだけが人生の目標では無いはずです。稼げるお金に限りがあるとして、それの配分方法次第で生活の豊かさも変わってきます。

 

その過程で、持ち家よりも賃貸の方が自分に適していると考えるのであれば、それが自分にとっての最適な解となるのでしょう。どちらが良い・悪いの話ではありません。それぞれの生き方に合った選択を行うだけの話で、「同僚が家を買ったから、うちも・・・」という発想の方が変なのです。自分の価値観やライフプランと照らし合わせて、持ち家より生涯賃貸の方が適している人もいるはずで、周りを気にしながら家を買うべきか、賃貸にすべきかを判断するものではありません。

 

また、家を買う場合でも、その時期は自分のライフプランによります。「同級生が家を買ったから・・・」というのは、自分が家を買うタイミングではありません。

 

子供の教育費にしても、いろいろな習い事をさせてやりたい、受験に有利な私立の学校に通わせてやりたいというのが親心なのかもしれませんが、それで家計が逼迫してしまっては、元も子もありません。子供に何を習わせて、どんな学校に通わせると親の手を離れるまでにいくらかかるのかを調べずに、行き当たりばったりでお金を使っていると、後で首が回らなくなります。

 

住宅資金、教育費、自己投資や趣味など、それぞれにどのくらいお金を配分するかをできるだけきめ細やかに考えることができると、毎月、毎年の資金計画を立てやすくなりますし、貯蓄へのモチベーションにもなります。その際に、自分たちにとって絶対必要なもの、できれば手に入れたいもの、不要なもの、と選別することにより、何にどれだけお金をかけるのか、メリハリをつけることが、限られた財源を有効に使う方法だと思います。