老後の住環境 (2)

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住環境への拘り

今の自分たちのスタイルに合った住環境が、必ずしも老後の生活に適しているとは限りません。ライフステージに合わせて引っ越しするのが良いのか、あるいは先々を見据えて“定住”するのが良いのか。住環境にどこまで拘るのかは、自分や家族の価値観に左右されます。

 

この点も妻と何度も話をしました。私たち夫婦、2人の娘たち。どこまで自分たちの生き方、暮らし方に拘りたいのか、拘る必要があるのか。

 

50歳に差し掛かった私たちにとっては、今の生活スタイルもさることながら、リタイア後の生活も見据える必要がありました。何が私たちにとって現実的な選択肢なのかを考えた結果、老後も安心して暮らせることを最優先にしました。

 

そもそも、車を持たない我が家にとって、老後まで安心して暮らせる環境とは、生活を送る上で必要な施設 – スーパーマーケット、銀行、病院、最寄り駅など - が徒歩圏内にあることです。利便性が安心感を支える最も重要な要素でした。納得できる土地を見つけるまでに時間はかかりましたが、住環境に拘るなら、費やす時間と労力は苦にはなりませんでした。

 

住む場所を決める際に大切なのは、周囲の雑音に振り回されないことです。知り合いに勧められたからとか、メディアで人気の住宅街と紹介されているからなど、他人の意見や流行は、自分の価値観と合致するとは限りません。

 

私の勤め先は世帯者用の社宅があり、私たち家族も3年前まではそこに住んでいましたが、社宅に住んでいた社員家族は、新居を構える際に、社宅の近くの物件から探し始めることが多いようでした。住み慣れた街に住み続けたいと言う希望や、子供を転校させたくない、などいろいろ理由はあります。

 

しかし、生活の拠点を考える際には、出来るだけ多くの項目を挙げて比較した方が良い結果が得られそうです。たとえば、住み慣れた環境に拘るあまり、肝心なことを見落としている、などと言うことも起こります。ほんの一駅郊外に離れるだけで住民税や固定資産税などが安くなったり、最寄駅からより近い物件を購入可能にすることも出来ます。治安面にも差が出てくるかもしれません。

 

また、今年は仕事のあり方と生活のあり方を見直す一年となりましたが、これによって、生活の拠点に対する考え方を変える人も多いのではないでしょうか。

 

在宅勤務が一般化し、出社回数が週の半分以下になれば、通勤の便をそれほど重要視する必要は無くなるかもしれません。むしろ、在宅勤務に適していること、ホームオフィスとしての家の機能が重要視されるのではないでしょうか。

 

家を買うということ

これまでの時代は、家や車などを購入する時にはローンを組むのが当たり前だったかもしれません。若いうちにまとまったお金を用意できる人は、それほど多くないでしょう。

 

バブル期のように地価が右肩上がりの時であれば、借金をして買った家でも、数年後に売却すると借金を完済して、なお手元にお金が残りました。しかし、バブル崩壊後、そしてこれから先は事情が異なります。人口減に伴って空き家が増えているような状況で、不動産の値上がりは期待できないと考える方が無難でしょう。

 

ローンを組んで家を買い、万が一、返済に窮したら家を売ってしまえば良い、と言うわけにはいきません。家を売却しても、ローンを完済できない可能性の方が高いのです。

 

また、終身雇用が過去の遺物となった今、超低金利という好条件下でも、20年、30年の長い期間に亘って借金を返済していくことは、大きなリスクを伴います。

 

会社勤めをしていて、特に社宅住まいの場合、隣近所が家を買って引っ越しをしたと言う話を聞くと、そわそわし出す人がいます。同じ会社に勤めているお隣さんが家を買ったのだから、自分も買えるはず。

 

しかし、手取りの給料はそれほど差が無くても、お金の使い方や運用はそれぞれの家庭で全く様子が異なるのではないでしょうか。子供の教育にかけるお金、趣味にかけるお金、食材や外食費 - 入ってくるお金が同じでも、出て行くお金の額が違えば、自ずと蓄えも違ってきます。

 

同じように、家を買うとしても、そのタイミングは人それぞれです。家は、一生のうちに何軒も建てられるものでは無いからこそ、家族構成やライフプランを考慮して、ベストな時期を探ることが大切です。

 

不確実と確実

私の同僚の中には、30代前半で家を購入する者もいましたが、私は当時、同じ会社に長く勤める自信がなかったことや、借金を抱えることを躊躇していたこともあり、社宅を出るかどうか逡巡していました。

 

その頃は、自分の仕事の先行きも分からない中、借金をしてまで家を買う必要があるのか、社宅を退去した後も賃貸で良いのではないかとも考えていました。

 

その一方で、結婚後間もなく、妻とも相談の上、“家を買ったつもり”で貯蓄を始めていました。当時まだ、住宅ローンの金利は高く、20年~30年に亘ってローンを返済した場合の利息は驚くほどの金額になりました。そこで、私たちは、利息負担を極力小さくするに越したことはなく、将来のために – 持ち家か賃貸かは決めていませんでしたが – 住宅資金目的の貯蓄をすることにしたのです。

 

その後、私は2度の海外転勤を経て、落ち着いて自分の家のことを考えられるようになったのは、つい3年前、50歳に差しかかった頃でした。結婚当初から25年間続けていた“つもり貯金”は家1軒を買えるくらいの額になっていました。

 

ローンは、「借り入れできる額」と「返済できる額」とでは、意味合いが違います。今は返済できる額でも、一年後にそれが家計を逼迫するほどの重石となる可能性だって否定できません。去年の今頃、今の世の中の状況を言い当てられた人はいないはずです。同様に自分の勤め先が1年後にどうなっているかなど分かりません。

 

せっかく、最適な老後の住環境が整っても、日々の生活に不安を感じながら生きているのでは本も子もありません。収入を得るための職業はますます不確実性が増しますが、老後は確実にやって来ます。確実にやって来ることに備えるのに早過ぎると言うことはありません。これから先どのような暮らしを送り、どのような老後を過ごしたいかを考えれば、自分に相応しいお金の使い方も自ずと分かってくるはずです。