「プロジェクト」の全体を把握しているか
私たちは当初、漠然と“いい”土地を見つけて、“いい”家を建てたいと考えていました。土地購入と新居建築をひとつのプロジェクトと考え、全体予算がいくらで、土地と家にそれぞれどのくらいのコストをかけるのかを突き詰めて考えていませんでした。多くの方々が、そんなこと最初に考えておくのが当たり前と言われるでしょうが、私たちの考えは大甘だったのです。
もう1社にもプランニングをお願いする
さて、妻は、私と一緒に見に行った土地に乗り気ではありませんでしたが、はっきりとした理由があるわけではなさそうでした。妻の心配性は今始まったことではないので、この時私はあまり気に留めておらず、それよりも、どんな家になるのか各社のプランニングの結果を待ち遠しく感じていました。
私たちには、もう一社プランイングをお願いする先が残っていました。以前施工例として引き渡し前の家を見せてくれたハウスメーカー(E社としておきます)。住む人ファーストの設計思想。The 注文建築。特徴的な家作りがとても印象的でした。あの後、地元の工務店や設計事務所にもあたったのですが、「これ!」という決め手もなく、家作りはA社、B社、C社の大手3社と、このE社の中から選ぼうかなと考えが固まりつつありました。それなら、E社にもプランニングをお願いしないと。先日の見学会では初対面にも拘わらず、営業のSさんや設計士のTさんと話が盛り上がったので、プランニングのお願いをすればきっと喜んでくれるだろうと思っていました。早速Sさんにメールで趣旨を伝えると意外な返事が・・・。
プランニングはお気軽な話ではない
各社に家のプランニングをお願いしただけなのに、私はすでに家作りに取り掛かったようなテンションの高い毎日を送っていました。この週末はA社のプランニングの説明を聞きに行く予定でした。
Sさんから長文のメールが返ってきたのは、プランニングをお願いした翌日の夜。会社帰りの電車に揺られながらSさんのメールを読み進めるうちに、テンションが下がる自分に気づきました。丁寧に言葉を選んで書かれたメールでしたが、行間から漂うのは私の浅はかな考えを突いてくるものばかり。しかも容赦ありません。思えば、ハウスメーカー選びや土地探しを開始したものの、土地代や建築費、その他諸々で全体としていくらかかるのか全く考えておらず、周辺の相場で“大体このくらいかかりそう”程度のことしか分かっていませんでした。
プランニングについて、Sさん曰く、お客様の要望を聞いて設計するだけならうち(E社)の存在価値はない。うちは、ご家族がそれぞれどのような生活をされているのか、ご家族の間の距離間、新居でどんなことをやってみたいのかを聞き出して、お客様に最大限喜んでもらえるような家作りを目指している、とのことで、家族ひとりひとりにインタビューするところから始めることになり、1週間でプランニングを完成させることは不可能。また、見積もりも最初から責任のある数字を提示するのが社の方針なので、数週間は見てほしい。とのこと。
Sさんからは、まずは“プロジェクト”の全体を把握するようアドバイスを受けました。
- 4人家族で住むとして、どの程度のボリューム(延床面積)の家を希望しているのか。
- その家を建てられる土地の面積を考える(建ぺい率や容積率は場所によって異なるので要注意)
- 家と土地にそれぞれいくらコストをかけられるか、諸経費も考慮して配分を考える。
言われてみれば、当然のことです。
また、家を建てるといっても、ハウスメーカーにより値段はピンからキリまで様々。もし、広さ重視であれば、ローコストのハウスメーカーを探さなければなりませんし、クオリティー重視であれば、家の延床面積を狭めなければなりません。限られた予算の中で、どのように“メリハリ”をつけるか、もう一度妻や娘たちと話し合う必要が出てきました。この後数日間、私たちは夜遅くまで時間をかけて話し合いました。これまでの結婚生活20数年の間で、一つのテーマで夫婦が真剣に相談し合ったことはありませんでした。
私たちが出した結論は、
- 土地は利便性を考えて、最寄り駅から徒歩20分以内の物件を探す。徒歩圏内で買い物が可能であること。
- 死ぬまで住むことを前提に、家は自分たちの希望を反映させたもの、かつ、クオリティー重視。
- 夫婦で意見が分かれた場合、その物件、ハウスメーカーは見送る。
の3つに集約されました。
一つの目標に向かって家族が一丸となった感じとなって、A社プランニングの日を迎えました。この日は家族4人でA社ショールームにお邪魔しました。当初は住宅展示場内のモデルルームで説明を聞く予定でしたが、先方の設計士の方が直々にプレゼンをしてくれるということで、場所が変更になりました。
週末の夕方、ショールームは、各フロアにドアや、キッチン、フローリングのサンプルが展示されており、時間を忘れて見て回ってしまいそうでした。私たちは、打ち合わせブースに案内され、そこでプランニングの説明を受けました。プレゼンは、図面だけでなく、3D映像をつかったもので、どんな家になるのか立体的にイメージできて非常に分かりやすかったです。気になる見積もりですが、私たちが想定していた金額よりもややオーバーしていました。私から営業の方には、改めて私たちが考えている予算額を伝えて、引き続き検討してもらうことにしました。明日は、B社とC社のプレゼンがあります。
自分たちの住む家のイメージが何となく掴めて、家を建てる実感が湧いてきました。そこにさらにいいニュースが飛び込んできました。不動産屋から、例の土地が100万円値下がりしたとの連絡が入ったのです。
(続く)