失敗と教訓 (1)

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失敗の積み重ね

失敗を重ねて得た教訓は、教科書で学んだ知識よりも現実の世界で役立つものです。ただし、失敗を積み重ねるだけでは何の教訓にもなりません。失敗から学んだことを、将来に活かせる知見として蓄積していく必要があります。

 

誰でも失敗はしたくないものですが、失敗することで得られるものがあるのなら、それが致命的な過ちとならない限り、自分の成長の糧になるのですから、恐れることなど無いと思います。

 

会社の仕事に限らず、何かに取り組む時には、試行錯誤を繰り返してスキルを身に着け高めていきます。失敗を重ねた先に新しい発明や発見があるのです。ところが、最近は、何かを手に入れるため、あるいは達成感を得るためだとしても、失敗するリスクは取りたくないと言う若手社員が増えてきています。

 

責任回避型社員

先日、私の勤め先で、丸一日かけて管理職研修がありました。もちろん、今や研修と言っても会議室で行うわけではなく、ビデオ会議システムでのリモート研修です。

 

さて、その研修でお世話になった講師の方とコーヒーブレイクにお話する機会がありました。恐らく私と同年代なのでしょうが、非常に気さくな方で、休憩タイムでも私を含めた数名の“受講生”の話に付き合ってくれたのでした。

 

研修のテーマが「部下の育成方法」だったことから、休憩時間の雑談は自然と世代間の考え方のギャップに話が移ります。そんな中で、講師の方から振られた質問がありました。それは、昨年、講師の方が私の会社の若手・中堅社員向けの研修を受け持って下さった時の印象を踏まえたものでした。

 

研修のサブテーマのひとつに、「部下のタイプに合わせた指導方法を考える」と言うものがありました。すなわち、やりがいのある仕事を「達成」することに重きを置くタイプ、早く上に立つ人間になって「権限」を持ちたいと言うタイプ、周囲の人間との「親和」を大切にするタイプ、困難な状況を「回避」しようとするタイプをそれぞれ想定し、そのような架空の部下の特性に合った指導方法をグループワークで議論するのです。

 

そのサブテーマの後の休憩時間に、講師の方から、私の勤め先では「回避」タイプの若手社員が多い気がするが何故なのか、と言う質問を受けたのです。

 

その時、雑談に参加していたのは私を含めて3~4名でした。私の今の部署にははっきりと「回避」タイプに属すると言える部員はいませんが、たしかに、責任を負わされたくないと言う雰囲気を“醸し出している”者はいます。他の管理職も講師の方の質問に頷きはしたものの、「何故なのか」と言う問いに明確な答えを返した者はおりませんでした。

 

多くの企業を回っている講師の方が言うのですから、我が社の「回避」タイプの社員が他社に比べて多いのは間違いないのでしょう。外部の方のそのような指摘に私はショックを受けましたが、私も含め管理職はその原因を分かっているのです。

 

敗者復活の無い減点主義

私の勤め先は、役所からの天下り役員を複数抱え、企業体質も役所らしいところがあります。ほんのひと昔前までは、完全に年功序列の人事が行なわれていたため、現在、表向きは「成果主義」を謳っていますが、年功序列の残滓が取り除かれるには、もう一世代、社員が入れ替わる必要があるのではないかと思っています。

 

そして、年功主義から成果主義へ評価方法を変えることの裏には、人件費抑制と言う目的があります。管理職の減数と昇格のハードルを上げることを推し進めているのは、いわばマイルドなリストラの一環なのです。

 

年功序列人事の下では、ある年齢に達すれば昇格できました。この昇格基準を厳しくするために利用したのが減点主義です。もっとも、減点主義は今に始まったものではありません。事業部門ではプロジェクトの失敗で関係者が責任を取らされたことがありました。また、かつては自分の部下が自己都合で退職した場合には上司としての評価に✖がつきました。そして、一旦“✖”がついた社員は退職するまでその“✖”を背負ったまま会社人生を歩むことになるわけです。しかし、当時の減点主義は年功制度にはほとんど影響を与えませんでした。昇格が1年遅れるなど、減点のダメージは然程大きなものでは無かったのです。

 

ところが、ここ最近の減点主義は、「落とすための手段」として強化されたものになっています。悪意ある言い方をすれば、所定の年齢に達した社員の昇格を、ケチをつけて阻むことなのです。もしこれが、仕事の成果が認められて、飛び級のように昇格するのであれば誰からも文句は出ないと思います。

 

しかし、会社が社員の失敗を論って出世を阻む一方、何も成功させたことが無い代わりに、失敗したことも無い - そんな社員が順調に昇格していく様を見れば、誰も新しいことや困難な課題に挑もうとしなくなるのは当然です。失敗しないこと - これだけを守っていれば、“安全に”昇格できるのですから。

 

また、そのような出世術としての失敗回避だけでなく、失敗すること自体を避けたいと言う若手社員がいるようなのです。件の講師の方から、一人の社員との話を共有してもらいました。

 

その若手社員は、将来何かの役職に就くことなど望んでおらず、逆に、ステップアップのために余計な責任は負わされたくないと思っているのだそうです。また、日々の業務でも、誰かの補助業務は受けるものの、自分が主体となって仕事をすることは避けたい。失敗した時に責められるような立場に置かれたくない。失敗すること自体が嫌だ。そのように考えているようなのです。(続く)