転職 中高年の無謀な挑戦

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用意周到な若手社員

私の本職は人事ではないので、採用に関して何か権限があるわけではありませんが、担当部門の人員補充などに際して、キャリア採用の面接に同席したり、就職・転職エージェントの営業担当とも接する機会があります。

 

最近ショックを受けたことがありました。あるエージェントの営業担当から転職希望者の登録数のデータを見せてもらった時の話です。やはり、20代から30代の登録件数が多いようです。私が何気なく「うちの社員はどのくらい登録しているのでしょうか?」と尋ねると、かなり具体的な数字を教えてもらうことができました。人員構成からするとこの年代の半数近くの社員がエージェントに登録していることになり、他のエージェントも含めると、相当数の若手・中堅社員が転職希望者であると言えそうです。

 

もちろん、エージェントへ登録したからと言って、即転職活動を行うという意味でないことは分かっていますが、潜在的な転職希望者の数には驚かされました。私の表情を見て、営業担当は、「最近の若い世代は就活生の時からエージェントを使うのに慣れているので、“とりあえず登録しておく”というケースも多い」という主旨のことは言っていましたが、転職を考えもしなければ、エージェントへの登録を思いつくこともないはず。

 

この話を人事部長に質したところ、「どこの会社でも普通」との返事が返ってきました。人事部としては、転職希望の社員に対して慰留はするが、本人の意向を尊重する方針とのこと。少し前までの人事部の対応とはだいぶ様子が違うようです。かつて、うちの役員が転職先の企業にまで圧力をかけて内定を取り消させようとしたこともありました。そのことをチクリと刺すと、「もうそういうことが許される時代ではない」し、「有能な人材はいくらでもマーケットから調達可能だ」とのこと。しかし、自己都合退職者と中途採用者の数を見比べれば、人事部長の言葉は弁明でしかありません。

 

いずれにせよ、今の若い世代は、会社が想像している以上に転職に関して用意周到な準備をしています。

 

根拠の無い自信

実は、エージェントの登録データには、当社の40代や50代の登録者も記載されていました。各世代とも片手で数えられる程度の登録者数でしたが、この年代 – 特に50代 - で転職を考えられるバイタリティに私は拍手を送りたいと思います。

 

とは言いながら、私が社内で実際に見てきた40代~50代の転職は2名しか知りませんが、ともに無残な終わり方をしています。

 

1人目は20年も前のことですが、私の大先輩の話です。我が社の自由選択定年制度を使って45歳で退職しました。某商社で資源事業部門の課長職を用意してくれているとのことで、半年くらい方々を旅行してから、キャリアを再スタートすると言っていましたが、いざその商社を訪れると、懇意にしてくれていた幹部の方の口約束だったことが分かりました。その幹部の方も社内で手を尽くしてくれたようですが、結局はこの話は流れて、地方の専門商社に再就職することとなりました。年収もかなり落ちたようですが、まだ当時は転職がそれほど一般的でなく、ましてや半年も遊んだ後での就職活動だったことを考えると、再就職できたのは不幸中の幸いだったと思います。

 

2人目は3~4年ほど前の話になりますが、上司との折り合いが悪く関連会社に出向となった私の数期上の先輩社員です。出向して半年も経たずに、選択定年制度を利用して退職しました。その後相当数の面談をこなしたようですが、いい返事が得られず、今はアルバイトをしながら、転職活動を続けているようです。50代を過ぎてブランクができてしまうと、その期間が長くなればそれだけ、転職の可能性は低くなってしまいます。本人は、自身のキャリアに自信があり、すぐに転職できるだろうと思っていたのかもしれませんが、自分の年齢とキャリアを客観的に見る目があれば、拙速に退職の道を選ぶこともなかったのかもしれません。

 

この2人、自分のキャリアに誇りを持ち、スキルや能力に自信たっぷりなところが相通じるものがあり、また、転職先が決まらないうちに退職してしまった点も共通しています。

何故、根拠なく自分の転職が成功するものと思い込んでしまったのかは、聞いてみなければ分かりませんが、昨今の用意周到な若者と比べると何ともお粗末な感が否めません。

 

客観的に自分を評価する目が大事

ふと思い出したのが、かつて中途採用の面接を行った男性でした。こちらの質問に素直に答えず、上から目線で自分を売り込むことしか考えない様は、話し手に頼もしさを印象付けるようなことはなく、むしろ不遜さを感じさせることにしかなりませんでした。心の底では、“雇ってもらって当然”という気持ちがあったのかもしれません。

 

転職が当たり前の世の中になったとは言え、準備を怠ってはいい結果を得ることはできません。転職先で自分が貢献できると思っていることと、採用する側の企業が求めるものが一致するということは簡単なことではないはずです。特別なコネがあれば別ですが、そうでなければ、エージェントをうまく使って転職先候補の企業とのマッチングを任せてしまうというのが、近道なのかもしれません。

 

それ以前に、特に中高年で転職を希望する方は、マーケットでの自分の商品価値は何なのかを改めて見直すことも大事だと思います。大企業で部長職を務められたのだから、どこの会社でも自分は必要とされるはず・・・などと根拠の無い自信は転職成功への道の邪魔にしかなりません。