子供との時間 後から取り戻せない大切なもの

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理想の家族生活が一変

もう20年前も前の話です。最初の駐在中に2人の娘に恵まれ、私はその間、家族ファーストの生活を送ることができました。当時の私の上司は彼の地での駐在も長く、家族のことを蔑ろにするような仕事の仕方を良しとしませんでした。そのお陰で、私は勤務時間も自分の裁量で決められ、成果が出せれば上司から文句を言われることもありませんでした。何と言っても家族のイベントがあることを知ると、カナダ人の同僚が私に休みを取るよう促してくれたことも後押しになりました。

 

寒いのが苦手という人は、冬の長いカナダの生活はつらいかもしれませんが、我が家は私と妻はスキー、2人の娘たちも雪遊びやそり遊び等ウィンタースポーツ(?)を十分満喫していました。短い夏の間は、ほぼ毎週末家族でキャンプに出掛けました。テント張りから食事の支度まで家族全員で行います。また、夏冬の休暇も日本と比べ物にならないくらい長く取れたので、家族でカナダ国内やアメリカに旅行に出かけました。本当に仕事もプライベートも充実した生活を送ることができました。

 

そんな生活が帰国後に一変します。

自分としては駐在前の生活に戻っただけなのですが、カナダでの家族ファーストの生活とは全く逆になってしまいました。当時の私は日付が変わるころに帰宅するという毎日だったので、家に帰ると娘たちの寝顔を見るだけ。休みの日もへとへとの体を休めることを優先してしまい、心身ともに娘たちと遊ぶ余裕がありませんでした。夏休みや冬休みは、妻が子供を連れて自分や私の実家に帰省するという有様です。

 

にわかに家族との関係がギクシャクし始めます。もっと家族のことを考えてほしいという妻の言葉は重々分かっていましたが、周りの同僚もなかなか思うように休みが取れない中、自分だけが家族中心というわけにはいかなかったのです。子供の運動会などの幼稚園のイベントにも顔を出すことができませんでした。

 

駐在から帰国して2年間、そんな生活が続きました。そしてその年の夏。市の企画で土日一泊の親子キャンプなるものがあり、当時幼稚園の年少組だった上の娘と参加しました。妻があまり乗り気でなかった私を泣いて説得して参加“させられた”ものでした。

 

親子キャンプで泣く

私と妻のやり取りなど知らない娘は、その日は朝からハイテンションでした。市役所前に貸し切りバスが到着すると、私の手を取って走り始めます。久しぶりに父親と遊びに出かけることがこんなに大はしゃぎするほどうれしいことだったのかと知って、今まで仕事を理由に無意識に妻や娘との時間を避けてきたことに対して、私は後ろめたい気持ちになりました。

 

キャンプ場では、ハイキングの後に夕飯作りをします。キャンプでは定番の(?)カレーライスと、食後のデザートのバームクーヘン。参加した親子が手分けして夕食作りに励みます。私と娘はバームクーヘンを作りました。段ボール箱に竹の棒を突き刺して、生地を棒に塗りながら下から炭火で焼きます。結構手間のかかる作業なのですが、娘はこういう根気のいる気長な作業が得意なのです。無心に生地を塗り重ね竹の棒を回し続けます。

 

「パパ楽しいね。また来たいね」娘の楽しそうな声を聞くうちに、私は思わず涙ぐんでしましました。帰国してからこれまでの間、私はとんでもない間違いをしていました。まだ幼稚園児の娘でしたがこの2年で背も伸びました。引っ込み思案だったのに、今では初めて会った子供ともすぐに仲良くなるほど積極的な性格になりました。毎日ひとつ屋根の下で暮らしていたにも拘わらず、娘の成長にも気づけなかったとは父親失格です。

 

大人の時間、子供の時間

子供の頃の時間の流れはとてもゆったりとしています。1か月余りの夏休みの何と長いことか。同じ1年でも、大人になってからは仕事に明け暮れてあっという間に過ぎ去ってしましますが、子供にとっては毎日が貴重な思い出として心に焼き付いていきます。その時間を共有することは親としての務めであり楽しみでもあると今更ながら思います。

 

キャンプの後、私の働き方は変わりました。同僚や先輩社員とも相談して仕事の分担を調整し、それぞれが少なくとも平日の2日程度は定時で退社できるようにすること、夏休みも1週間は休めるように業務を分担することを試してみることにしました。結果は満点とはいきませんでしたが、仕事の進め方が改善されたことは事実です。それよりも、私としては同僚や先輩社員に私の家族への思いを伝えることができ共感を得られたことが何よりも嬉しいことでした。

 

また、家では、一緒にお風呂に入ったり、寝る前に絵本を読み聞かせしたり、これまでの分を取り戻すつもりで、毎日わずかでも娘たちとの時間を取れるように努めました。親子キャンプはその後毎年、次の駐在でアメリカに赴任するまで参加しました。途中からは下の娘も加わり親子3人となり楽しい思い出作りができました。

 

子供にとってかけがえのない存在

私の部には幼稚園児や小学生の子供を持った部下がいます。彼ら・彼女らには、予め、家族のイベントは業務より優先するように伝えています。自分が犯した間違いを彼ら・彼女らに繰り返してもらいたくないという思いがあります。

 

会社の仕事はいくらでも替えが利くのです。「俺が/私が会社に行かないと仕事が進まない」と本気で思っているのだとしたら、それは、その人が“余人をもって代え難い”存在だからではなく、単に上の人間の業務振り分けの仕方が悪いだけです。

 

一方で、子供にとって親はかけがえのない存在です。かつて、そうできなかった私が偉そうなことを言える立場にないことは承知していますが、子供が必要とするときに寄り添ってあげるのが親の務めだと思います。