和尚さんの水飴

老後の前のハッピーアワー

多様化と平準化(1)

懐かしい顔に嫌われ

連休明けの最初の出社日。妻から「気分が優れない」と電話があり、半日で仕事を切り上げることにしました。今投与している薬は副作用がほとんどなく、妻の体調不良は薬のせいよりも精神的なもののようです。

 

同じようなことが去年もありました。妻の心の波は日和見的で予測不能です。同じく気分が優れない時でも散歩をして気晴らしをすることもあれば、今日のように家から出られず誰かに寄り添っていてもらいたいと感じることもあるようです。

 

帰宅の途中、駅の構内で懐かしい顔を見つけました。彼女は数年前に人事部の下に新設されたダイバーシティ推進グループのリーダーとしてキャリア採用された女性でした。残念ながら、彼女は志半ばで退職してしまいましたが、それまでの間、彼女とは喧々諤々の議論をしてきた間柄だったので、マスクをしていても私にはそれが彼女だとすぐに分かりました。

 

ところが、相手は - 私の思い違いでなければ - 私の顔を見るなり目を逸らせ通り過ぎて行きました。私が彼女から嫌われていたのか、元の職場の人間とは目も合わせたくなかったのか、あるいはそのどちらも理由なのかもしれません。

 

もし、ここでお互いに軽い挨拶をし合えたなら、彼女が退職した時に感じた私なりの気まずさが少しは拭えたのでしょうが、私は通り過ぎる彼女を呼び止めることが出来ませんでした。

 

活躍の場の押し付け

昼下がりの空いている電車に腰かけて、持っていた文庫本を開いたものの読書に集中出来ず仕舞いでした。

 

数年前、彼女が最初に取り掛かったのは、女性社員の活躍の場を広げることでした。その一環として、一般職として採用された女性社員を全員総合職に転換しました。

 

それまでにも、一般職で入社した社員が総合職に転換できる制度はありましたが、狭き門であったのは確かです。その一方で、余計な責任を負わされたくないと考えて、一般職のポジションに満足している社員も少なからず存在していました。

 

事実、当時の私の部下の中には、総合職に転換“させられても”仕事の負荷は増やさないでほしいと願い出る者がいました。

 

総合職になることを望まない社員が意外に多かったことは、女性社員の活躍の場を広げようと意気込んでいた彼女にとって受け入れ難い事実だったのだと思います。私は彼女に何度も、「部下のやる気を引き出すのが上司の役目」だと言われました。

 

しかし、会社で働く者が一様に出世や昇給を望んでいるかと言えば、決してそうではありません。一般職として、そこそこの手当が保障されれば、あとは自分の生活を充実させたいと考える社員もいたのです。

 

私の元部下だった女性は、当時、四十代前半の既婚者で小学生のお子さんが二人いたと記憶しています。その女性社員は入社以来、同じ部署で仕事を続けてきました。総合職への転換は望んでいませんでしたが、それは彼女が仕事に対する意欲がないと言うのとは違います。彼女は一般職のポジションで自分の力を発揮してくれていたのです。結局、彼女は総合職に転換後、別の部署に異動しその後しばらくして退職しました。(続く)