和尚さんの水飴

老後の前のハッピーアワー

来る人去る人

意識調査

毎年、社員を対象とした意識調査なるものがあります。質問項目は多少の違いがあるものの、仕事、職場環境、上司との関係や経営陣の判断等に対して、五段階でそれぞれの満足度を答えて、理由を記す内容になっています。

 

意識調査の結果は、部長以上の管理職には伝えられますが、社内でオープンにされることは - 私の記憶の限りでは – 一度も無く、上司の裁量で部内展開して“お仕舞”となるのが常でした。

 

私がまだHR委員会のメンバーだった頃、意識調査に対して経営陣のフィードバックを求めてみてはどうかと具申したことがありましたが、一部の賛同者のサポートを得るに留まりました。

 

思うに、経営陣が社員からの意見を吟味してコメントするには、会社の現状を直視せざるを得ません。会社が抱える諸々の問題の根源がどこにあるのかを自らに問いかけることになります。もちろん、それは、真摯なコメントをする場合に限りますが。

 

すでに“上がりの”ポジションに到達した人間が、自分で自分の顔に泥をする道を敢えて選ぶことなどしないでしょう。平穏無事に過ごすには何もしないに限る – のです。

 

HR委員会の現メンバーが、社員の意識調査に辛辣なコメントをあまり見かけなくなったと喜んでいました。何か環境が大きく改善されたわけでもなく、若手・中堅社員の離職率が下がったわけでもないのですから、喜ぶより前に疑問に思うべきところですが、これは、もしかしたら広い意味での正常性バイアスなのかもしれません。

 

大きな船は船底に穴が開いてもすぐに沈むことはありません。しかし、穴が開いていることを知っているネズミは逃げる準備をすでに始めています。

 

来る人去る人

新年度となり、新入社員研修が始まりました。昨年は講師を務めましたが、今年は私とパートナーを組んでいる若手社員に任せることにしました。人事部からは大反対を食らいましたが、私が同席してサポートすることを条件に受け入れさせました。

 

仕事を体得するには、人に自分の仕事を教えられることが一つの基準になります。それが出来ずに、質問されても答えられないようでは、まだ勉強不足と言うことになります。

 

先月は、仕事の合間の時間を使って、彼と共に研修用のプレゼン資料作成に取り組みましたが、後半になると、彼は自分が説明しやすいように構成を変えたり文言を修正したりと、講師役としての自覚が感じられました。新入社員研修の一コマを任されることが、ささやかながらも彼にとっての成功体験になれば嬉しいと思いました。

 

その一方で、私がかつて仕事でつながりのあった中堅社員が二名、今月一杯で会社を去ることになりました。

 

彼らとの付き合いは期間限定的なものでしたが、それでも、仕事をするのに適した人物か否かは分かるものです。若い人たちが生き生きとしている姿は、見ている側も励まされ、楽しい気分にさせてくれます。

 

彼らと時間を共にしたプロジェクトはとん挫してしまいましたが、当時の私は、また機会があれば、彼らと一緒に仕事をしたいと思い、願わくは自分の部署に引っ張ってきたいとさえ考えていました。

 

結局、それは叶えられず仕舞いでした。彼らの胸の内を知る由もありませんが、私は、彼らに成功体験を味わわせられなかった一人として忸怩たる思いがあります。