卒業式
下の娘は、自己主張が強く、高校では担任の先生や同級生と衝突を繰り返してきましたが、大学入学を境に相手の気持ちを汲み取ろうと努力するようになりました。そこには、高校時代の苦い経験や、闘病中の親への思いなどいろいろな要因があったのでしょうが、ともあれ、角の取れた娘は頼りになる家族の一員に成長しました。
四年間の大半をコロナ禍の中で過ごし、おまけに病気の母親の心配も相まって、暢気に学生生活を楽しむことなど出来なかったはずです。しかし、娘はムードメーカーとして家族を盛り立て、かえって妻や私の方が支えてもらう立場になっていました。
一昨日は、そんな娘の卒業式でした。
家族の参列は二名までとのこと。四年前の入学式は、家族の参列は一名までと限られていたため、じゃんけんで私が参列権を獲得しました。
そんなこともあり、今回は妻と揉めずに済むと思っていたところ、前日になって上の娘が式に参列したいと言い出しました。
彼女の代は、コロナ禍のために卒業式が中止となり、感慨にふけることなく学生生活の幕が下りてしまったので、妹の卒業式に参列して同じ感動を味わいたいと思ったのでしょう。そうなると、誰がその席を譲るのか – 妻と娘の“圧”に負けた私は、会場の外から卒業を祝うことになりました。
当日は、式が終わると、主役の娘は仲の良かった同級生と袴姿のまま街に繰り出し、残りの三人で遅めの昼食を摂ることにしました。
普段、あまり感情を露わにしない上の娘ですが、食事の間、いつもよりも饒舌でした。妹の卒業を祝う気持ちとともに、自分自身が卒業式の雰囲気に浸ることが出来た喜びがそうさせたのだと思います。
子育て卒業
帰宅した後、私は着替えを済ませてから、予約していたお祝いのケーキを受け取りに出かけました。
ケーキに添えるメッセージプレートには娘二人の名前を入れてもらいました。上の娘の時も、ささやかながら家で卒業のお祝いはしたのですが、私としては、改めて二人分のお祝いをしたい気分でした。
下の娘の帰宅は、日付が変わる直前でした。普段なら妻か私が門限破りを咎めるところですが、この日ばかりは親の小言は無し。ケーキを取り分けて家族四人で夜更かしを楽しみました。
私たちはこれで子育てから卒業することになります。二十年あまりの子育ては決して順風満帆な時ばかりではありませんでしたが、それでも十分な幸せを分けてもらいました。娘たちへの感謝の気持ちで一杯です。