和尚さんの水飴

老後の前のハッピーアワー

運転免許証返納の英断

免許返納

先日、義兄が運転免許証を返納しました。今年の夏に七十五歳になる義兄は、年齢よりも若々しく見え、これまで無事故無違反のゴールド免許保有者でした。

 

そんな義兄が、昨年末に自損事故を二度起こしました。そして、今月に入って、車庫入れの際に自宅の塀を壊してしまいました。

 

立て続けに運転ミスを起こすようになったため、義兄は病院で検査を受けることにしたそうですが、それに先立って、運転免許証の返納を決断したのだそうです。

 

義兄のように車の運転が生活の一部となっている人は、運転能力の衰えが見えにくいのだと思います。今日出来たことは明日も出来ると考えがちですが、高齢の域に達すれば、少しずつ出来ていたことが出来なくなっていくものです。それをどのように見極めるのか。“出来なくなった自分”をどのように受け止め、受け入れるのか。

 

“出来なくなった自分”を認めるのはつらいことですが、義兄は、まだ冷静に判断出来る年齢のうちに自分に見切りをつけたのでしょう。

 

英断

警視庁の統計では、一昨年(2021年)に発生した交通事故を調査した結果、七十五歳以上の免許人口十万人当たりの死亡事故件数は七十五歳未満の約二倍となっているので、高齢になれば交通事故のリスクが高まることは間違いないと言えます。

 

加齢と運転技術や判断力が相関することは簡単に想像がつきます。ただ、運転能力は、運動機能、近く機能、あるいは認知機能など様々な要素から成り、それらは生活習慣や健康状態にも影響されるので、年齢だけを頼りに高齢者の運転能力を判断するのは困難な気がします。

 

義兄は、自ら運転能力を見極め、車の運転を止める決断を下しました。それは、ささやかですが、交通安全への貢献の観点から、私は“英断”だと思います。

 

義兄にとって車は、移動手段である以上に、自立や社会参加のための道具だったはずです。その道具を手放すことで、生活圏が狭くなり、孤立するリスクも考えなければなりません。もちろん、そのようなことも考慮した上での免許返納なのでしょう。

 

私は日常生活では車無しの生活を送っていますが、旅行の際には旅先でレンタカーを運転することもあります。そんな私も、遠くない将来、高齢者の仲間入りをします。普段、車の運転をしていないため、どのようなタイミングで運転免許の自主返納を決断するのか、なかなか難しい問題です。