和尚さんの水飴

老後の前のハッピーアワー

拍車のかかった少子化

危機的状況

二月末に公表された厚労省の人口動態統計の速報で、昨年の出生数がついに八十万人を割り込んだことが判明しました。これは、同省の予想よりも十年余り早いペースだそうです。

 

少子化に歯止めがかからない」。同じようなセリフを何度も繰り返し聞かされると、危機感が希釈されるような気がしますが、具体的な数字を示されると、すでに危機的状況にあることが分かります。

 

コロナ禍や経済的不安が少子化傾向に拍車をかけたことは容易に想像できますが、歯止めをかけられないばかりか拍車がかかってしまった少子化が、今後改善される見通しはあるのでしょうか。

 

少子化の要因は複雑で、子育て支援の制度を拡充すれば問題が解決されるとは思えません。もちろん、子どもを産み育てるための環境が大切であることは言うまでもありませんが、環境が整ったとしても、個人のライフスタイルに重きを置き、あえて子どもを持たない選択をする人も少なくないのではと思います。

 

子ども一人を育てあげるためのコストは、親の教育方針にも左右されるのでしょうが、そこそこの補助金をばら撒き、税制面で優遇したとしても、どれほどの効果があるのか。私は経済的支援が少子化対策たり得るには、若い世代が大きなインセンティブだと受け止めるくらいの大胆な支援でなければ効果は薄いのではいかと考えます。

 

子育て支援への理解

子育てしづらい状況には様々な要因がありますが、仕事と育児のバランスもその一つです。

 

就職後のキャリア形成やワークライフバランスへの関心に、男女の別はありません。しかし、出産と言う行為そのものは男性が代わることは出来ないので、仕事を持つ女性が子どもを産むとなると、産休・育休によるブランクは避けられません。

 

雇用する側は、産休・育休を取る社員が不利益を被らないようにしなければならない - 男女雇用機会均等法ではそう謳われていますが、休業がキャリアパスに全く影響しないのか、と問われると疑問が残ります。人事考課での本人に対する“不利益”は、はっきりとは見えません。しかし、相対評価の中で、産休・育休によるブランクがポジティブに評価されることはないのは確かでしょう。

 

最近では、男性社員の育休制度も一般化しつつあります。私の勤め先でも、ここ数年で、育児休業を取る男性社員がちらほら現れましたが、それでも、キャリアパスへの不利益を恐れて休業を躊躇する者が少なからずいると聞きます。

 

そのような状況下での、男性による育児への積極的な参加は、“言うは易し”で、行政の指導やサポート以前の、現場での意識改革の問題なのですが、子育てに積極的に参加して来なかった世代が上に立っている間は、状況が大きく改善されることは無いのではないか、と私はやや悲観的に見てしまいます。

 

ワークライフバランスの言葉とは裏腹に、若い世代が自分たちより上の代の仕事振りや育児に苦労している様子を見れば、多様化した生き方の中であえて苦労する道を選ばないとしても不思議ではないと思います。