和尚さんの水飴

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フリーアドレス

フリーアドレス

私の勤め先は、新型コロナによる緊急事態宣言を機に出社と在宅勤務を併用するハイブリッド型の勤務形態になりました。依然として感染防止のために部署ごとで出社率を調整しているので、普段の出社率は五割から六割の間に収まっています。

 

以前は狭苦しく感じた事務所も人口が半分程度になると圧迫感も薄まります。私は事務所の人口密度はこのくらいが最適なのではないかと考えていました。ところが、先日、総務部の知り合いから、来夏からフリーアドレスを導入して、その後事務所の一部を返還する予定であることを聞きました。

 

恐らく、経費節減のために事務所の賃借面積を縮小することが目的なのでしょうが、フリーアドレス導入の表向きの理由は「社員のコミュニケーションの活性化」などとするのでしょう。いずれにしても、この手の労働環境の変更は十分な検討時間を設けて慎重に進めなければならないと思うのですが、“来夏”の導入を目指すとなるとあまり時間はありません。

 

そもそも、同じ会社の中でもフリーアドレスに向いている部署とそうでない部署があります。私の部署が属する部門は、仕事の特性上、プロジェクトチームを組成して業務を進めるため、フリーアドレスが導入されたとしても、出社する社員はどこかに固まらないと仕事がやりづらいことは間違いありません。

 

少し前の話にはなりますが、同業他社の私の知り合いから聞いた話では、一年間フリーアドレスのトライアルを行なったものの、前日と同じ席には座らないなどのルールを設けないと同じ者同士で寄り集まる傾向があり、結局は導入しないことになったそうです。

 

聞き入れぬ要望

総務部が他社の先行事例の情報をどの程度収集・検討したのかは定かではありません。しかし、私の勤め先に限って言うと、ペーパーレス化も道半ばで、PCの周辺機器の統一も出来ていません。職種によっては大画面のディスプレイを二台必要としますが、そのようなことへの対応を総務部がどこまで考えているのか分かりません。

 

労働環境を改善するための方策であるなら、サプライズ的なアナウンスでも良いでしょう。ただ、今回のフリーアドレス化が職場環境の改善につながるのか問われると、大きな疑問が湧いて来ます。社員からのボトムアップで出て来た要望で無い限り、余計な混乱が生じることは想像に難くありません。

 

他方、打ち合わせスペースや会議室の増設については、方々から要望が上がっているようですが、総務部がそれらへの対応を検討しているのかすら伝わってきません。

 

現状は、打ち合わせスペース不足はオンラインミーティングで凌いでいるようです。しかし、出社している者同士が各自の机からオンラインミーティングに参加している姿は滑稽です。マイクを通さなくても声が聞こえるくらい近くにいる相手同士で会話をしているのを見ると、子どもの頃に遊んだ糸電話を思い出します。

 

職場環境の改悪が人材流出に拍車をかけないことを祈るばかりです。