和尚さんの水飴

老後の前のハッピーアワー

全員参加型家事

家事見習い

以前、名も無き家事について記事を書きました。

lambamirstan.hatenablog.com

 

lambamirstan.hatenablog.com

 

これまで夫婦で家事を分担していた時は気がつきませんでしたが、妻の闘病生活が始まり、私の家事の“相棒”が娘たちに交代してから、我が家の名も無き家事がにわか気になり始めました。

 

洗い物をしていて気がついたら洗剤を補充する、洗濯機のフィルタは都度掃除しておく、除湿器のタンクは満水になったら捨てる – 些細なことではありましたが、これまで妻と私が普通に行なってきたので気になることもありませんでした。

 

当初、私はワンオペで家事をするつもりだったので、娘たちを当てにするのが間違いだったのですが、どうしても手が回らない時には彼女たちに手伝いをさせることもありましたが、言われたこと以上のことは気が回りませんでした。

 

名のある家事ですら覚束ない娘たちを見て、今まで家事全般が普通に回っていたのは夫婦の阿吽の呼吸のお陰だったことを痛感しました。

 

娘たちには、学業に専念できるよう - 専念していたかはともかく - 家の手伝いは最小限にしていたのですが、あまりの不甲斐なさに私は不安を覚えました。

 

生活力とは、自分の食い扶持を稼ぐことだけでは無く、独立して生活するための必要最低限のことを一通りこなせる能力なのだと思っています。

 

もし、娘たちが独り暮らしを始めれば、自ずと全ての家事を自分でこなすことになるでしょう。仮にそれが出来なくても、他人様に迷惑をかけないのであれば、部屋が散らかっていようと洗濯物が山になっていようと誰からも文句は言われないでしょう。しかし、生活環境や食事や健康を含めた自己管理が出来るようになってもらいたいと言う親の欲目は簡単に捨てることは出来ません。

 

娘たちがいつ、どのような形で巣立っていくかはまだ分かりませんが、私はそのための準備を彼女たちに考えてもらいたいと思うようになりました。

 

独り暮らしの準備

それから二年余りの時間が過ぎ、二人の娘たちはそれなりに家事を意識するようになりました。

 

炊事は基本的に私の担当なのですが、娘たちは週に一回は料理当番を買って出てくれます。姉妹の間で何か取り決めをしたのか、自然とそう思うようになったのかは分かりませんが、キッチンに立つ娘の姿を一番喜んでいるのは妻なのかもしれません。以前は、野菜の皮むきやお米を研ぐくらいは言われたらやっていましたが、それ以上の手伝いは気が向いた時だけしかやりませんでした。

 

その時と比べて、見違えるようになった娘たちの姿は、この二年間の心境の変化、あるいは心の成長の賜物なのでしょう。もはや彼女たちは家事見習いではありません。

 

全員参加型家事

長女は最近、独り暮らしのことをよく話題にします。就職して二年目ともなれば、親から独立することを考えてもおかしくありません。内向的で自分から行動を起こすのが苦手だった娘でしたが、ここにきて遅まきながら自立心が芽生えて来たのだと思っていました。

 

ところが、今年に入って次女が私に、長女を追い出すのかと尋ねました。“追い出す”とは人聞きの悪いことを言うものだと理由を聞くと、上の娘が不安に思っていると言います。

 

おそらく、私が炊事や家事、それに家計管理を娘に教えている中で、「それくらい出来ないと独りで生活するのに困る」と言ってきたのを長女は早晩“追い出される”ことになると捉えたのでしょう。

 

次女は、自分の姉のことを今でも頼りない存在と思い込んでいる節があります。小さい時から引っ込み思案な姉と、積極的で外向的な自分との違いを意識していて、これまでも、妹が姉をリードする場面が多々ありました。傍から見ると、どちらが姉でどちらが妹か分かりません。

 

そんな意識が抜けないのでしょう、次女は、自分は就職して、時期が来たら独り暮らしを始めるから長女はもうしばらく家に置いてやって欲しいと“懇願”するのでした。

 

私は、次女も長女も家から追い出すことなど考えていません。頼りなかった長女は今では頼りになる存在であり、次女も家族の中で一番年下にも拘わらず、よく周りが見えています。私が意地を張って宣言したワンオペ家事は家族全員参加型の家事になりました。その方が自然なのでしょうが、それを自然に出来るようになったのは娘たちの協力があってこその話でした。

 

もちろん、親としていつまでも子どもを束縛するわけにも行かず、独り立ちしたいのならそれを止めることはしませんが、もし、親と同居するのが嫌でなければ、今のまま、もうしばらく娘たちとの生活を楽しみたいと思っています。

 

そんな話を次女にすると、心無しか顔に安堵の表情が浮かびましたが、直後に私に向かって、そのことは長女には言わない方が良いと言いました。「すぐに怠けるから」 - 相変わらず次女の長女に対する言葉は毒がありました。

 

妻が安心して過ごせるようにと、抜かりの無い家事を目指した私でしたが、結局は、ワンオペでやるよりも娘たちに手伝ってもらった方が気が楽なのは間違いなく、それが娘たちのためになるのであれば一石二鳥なのだと考えるようになりました。