和尚さんの水飴

老後の前のハッピーアワー

睡眠と体調

心の平穏

私は加齢による気力や体力の衰えは、多少抗うことは出来ても認めて付き合っていく他無いと諦めていましたが、若い時の筋力や瞬発力を取り戻すのは無理だとしても、持続力・スタミナに関しては、ある程度の年齢を越えても改善の余地があるのではないかと思うようになりました。

 

これまで平日は会社の往復だけの生活だったので、一日の歩く距離はたかが知れていましたが、在宅勤務のお陰で、早朝あるいは夕方のウォーキングが習慣になったことから、心身ともにリフレッシュ出来ている実感が得られるようになりました。

 

特に、昨年の今頃からの一年間を振り返ってみると、ここ数年、もしかしたら十数年感じたことの無いほどにベストな状態にあると言えます。

 

気がつけば、慢性的な倦怠感や原因不明の焦燥感と言った、負の感情を掻き立てるようなものは無くなり、心が平穏な状態にあることが自分でも分かります。もちろん、生きている以上、他者との関わりの中で怒りや悲しみの感情が湧き起こることが無くなることはありませんが、以前のようにそれを引き摺ることはありません。

 

また、自分の中でまだ決着していない、納得出来ていない昔の苦々しい経験・記憶が頭を過ることが少なくなりました。かつては、思い出したくも無い嫌な経験ほど、自分の意思と関わり無く思い出されることがありましたが、最近はふと蘇って来る記憶は良い思い出がほとんどです。

 

眠りの質

穏やかに過ごせている最大の理由は、睡眠の質が向上したためだと思います。元来、ショートスリーパーだった私ですが、三年前の体調不良時にお医者さんから忠告されて以来、睡眠時間を増やすように努めるとともに、その質にも注意を払うようになりました。

 

睡眠の質に注意を払うと言っても、布団や枕を変えるといった物理的なことは一切していません。唯一行なっていることは、就寝前に雑念を払うための時間を設けることでした。お医者さんからは寝る前には余計なことは考えずリラックスするように言われました。

 

とは言え、当時の私の生活は会社中心に回っていて、布団に入ってからも翌日しなければならない業務の段取りを考えたり、社内調整のことを考えたりしながら眠りに就くことがほとんどだったので、リラックスとは正反対のことを習慣にしていました。当然、目覚めは快適とは言えるものではなく、起きた時にすでに頭も体も疲労感を覚えている状態でした。

 

睡眠の質が改善されたと感じ始めたのは、役職を下りて職責が軽くなった後のことでした。部下の管理や社内調整の必要が無い、自分単独でほとんどの業務が完結する今の役割は、自分の裁量で仕事のペースをコントロール出来ます。

 

これまでの仕事のやり方が、連続ドラマのように、気になる場面が次回に持ち越されるような展開なのに対して、今の仕事は一話完結。その日の話はその日に結末を迎えます。結果として - 全くゼロと言うわけではありませんが - 布団に入る前に余計なことを考える必要が無くなりました。

 

もう一つは、生き方の方向性が見えて来たことも良質な睡眠を確保できるようになった理由だと思います。

 

私自身の体調不良とほぼ時を同じくして妻の病気が見つかったのですが、目の前が真っ暗になったのは一瞬のことで、むしろ、そのような“ダブルパンチ”は、私にとって家族との向き合い方や時間の使い方を真剣に考えるきっかけとなりました。

 

“吹っ切れた”と言うのとは違いますが、それまでの日々流されて来た暮らしぶりに対して、今は家族や自分のことを考えながら生きている実感があります。自分のための時間の確保、家族との時間の共有、そこに軸足を置いくことが、今の私が望む生き方の方向性なのだと考えています。

 

昔の私は、へとへとに疲れていても目が冴えて眠れない、と言った経験を何度もしてきましたが、良質な睡眠のためには、まずはそのための環境作りが大切なのだと思います。