和尚さんの水飴

老後の前のハッピーアワー

気遣いは家族のために

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「倍返し」とはいかない現実

長い会社生活の中で、好き嫌いに関わらず様々な経験を積んできましたが、私は仕事で爽快な気分やカタルシスを感じたことはほとんどありません。入社時がバブル崩壊直後だったことと、景気の良し悪しで左右される業種ではないため、会社の業績はずっと低空飛行が続いている状態です。私個人としても、長きに亘って大きな成功と言うものを体験せずにここまで来ました。

 

逆に嫌な経験には事欠きません。恨まれたり、責任を押しつけられたり、干されたり・・・。もちろん、そこは世渡りに長けていない自分自身に非があることは間違いありません。しかし、信頼していた上司や先輩に裏切られたり、スケープゴートにされたりすると、周囲の人間を容易に信用できなくなってしまうものです。初対面の人を、まず疑って見てしまうというのは、私の悪い癖になってしまいました。

 

酷い目に遭わされたら、倍返し・・・と言うのはドラマの世界の話であって、私はそこまでの反発心を持っていませんでした。周囲に目を向けると、自分の保身や昇進のことしか考えていない人間が、私の思っていた以上に多いことに愕然とし、そのような社内の派閥争いに巻き込まれないように生きてきました。

 

誰からも恩は買わない

社内で無派閥の私を取り込もうとする者もいます。それは、私に特別の資質や能力があるからでは無く、単に少数派が数を増やそうとしているだけの話です。

 

さて、先日、自分の体調が優れないことと妻の病気療養のこともあり、直属の上司に、もう少し負荷のかからない職場への異動を申し出ました。上司は、私の家庭の事情に理解を示す振りはしたものの、私を今のポジションに就けるためにどれだけ根回しをしたかを滔々と述べ、また、ここで異動になれば“先は無い”、と言う趣旨のことを遠回しに私に告げました。恩と脅しで私を揺さぶろうと言うことなのでしょう。

 

端から私は昇進に興味は無く、家族の面倒が見られる環境さえ整えられれば、閑職への異動でも降格でも甘んじて受けるつもりでいます。そもそも、今のポジションもこちらからお願いして就いたものでは無く、上司がそのために誰にどのような根回しをしていようと、それは私の与り知るところではありません。

 

よく、転職を希望する者に対しても、「恩と脅し」を使って引き止めようとする上司がいますが、そのようなことを気にしていては、転職のタイミングを逃してしまいます。自分が転職したら、職場に迷惑が掛かるのではないかとか、やりかけの仕事は大丈夫だろうか、などということは心配する必要は全くありません。それをどのように処理するかは、残された人間が考えることです。真面目な転職希望者ほど「立つ鳥跡を濁さず」を実直に守ろうとしますが、現実社会では、その真面目さは命取りになる可能性があります。そのためには、上司や先輩社員に対しては、いつでも「ノー」と言えるような距離感を持った付き合い方も必要です。

 

話が逸れましたが、私の経験では、上司の誉め言葉と脅し文句は真に受けないこと。上司の評価に一喜一憂しないこと。上司に媚を売らないこと。これができれば、会社員生活も肩の力を抜いて楽しめるようになります。もっとも、仕事そのものからくるストレスは逃れようがありませんが。

 

別の記事で折に触れ何度か書いてきましたが、仕事と家庭のどちらが自分にとって大切かを考える必要があります。仕事は自分の代わりがいくらでもいる一方、夫・妻、あるいは、父親・母親という役割は替えが利かないのですから。本当に気を遣うべき対象は誰でしょうか。

 

家族と昇進

今年の1月まで私の部下だった社員。今月彼の奥さんが臨月を迎えています。コロナ禍の中、両方の実家を頼ることもできず、夫婦二人で出産と育児に臨みます。

 

私は、在宅勤務を基本にしていますが、週に1~2日は出社してペーパーワークをこなしています。先日出社した際に件の元部下の顔が見えたのですが、あまり浮かない表情だったので、声を掛けました。

 

異動先の部署では、ほとんどの部員が出社しているとのことで、元部下も“同調圧力”に屈して会社に顔を出しているのでした。

 

通勤時にはマスクの着用。会社の入り口では手をアルコール消毒。極力密集を避ける。社内で周知徹底している感染予防策ではありますが、肝心なことが欠けています。在宅勤務の一層の勧奨です。全社的にそれができないのであれば、各部でやればいいだけの話です。通勤電車の込み具合と、3密を避けられる状態に無いことは、実際に通勤をしている会社員が一番良く分かっているのです。

 

どうして、自分の身を危険に晒してまで会社に行かなければならないのでしょうか。通勤に社有車を使っている経営陣は、おそらくそのような実情など知る由もありません。だから、自社の方針を決めるのに行政の判断を頼りにせざるを得ないのでしょう。もっとも、経営陣に全社員の在宅勤務徹底を進言できない総務部門が一番無能なのだと思います。

 

元部下の上司は彼の奥さんが臨月だと言うことを失念していました。年初の彼の異動の際に私が申し送りをしたにも拘わらず、そのことが頭からすっぽり抜けてしまっていたようです。元部下も余計な気遣いから、上司や同僚に事情を話せなかったと言います。私が、「評価が下がるとでも思ったのか」と聞くと、彼は苦しそうに首を縦に振りました。

 

そう考えるとどっちもどっちなのですが、一番割を食ったのは独りで留守番をしている奥さんです。その日、私は彼の上司に、彼を極力出社させないように頼みました。もし、彼が感染者になったら、誰が奥さんと生まれてくる子供の面倒を見るのでしょうか。家族と会社を天秤にかけるのは愚の骨頂です。