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老後の前のハッピーアワー

イライラの芽(2)

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自分を追い込まない

前回の記事で、自分に課せられた義務や課題、他人との意見調整など、プレッシャーや煩わしさが気の重さ、すなわちイライラの芽の種だと言う話をしました。

 

lambamirstan.hatenablog.com

 

仕事と私生活のバランスが保てれば問題は無いのでしょうが、それはなかなか容易なことではありません。仕事のトラブル、家庭内の問題、大小様々な悩みがつきまとっていることが常態化していると、気が休まる時間がありません。

 

かつては、仕事第一と言う会社との間の暗黙の了解があったため、家庭不和を引き起こすことになってしまった同僚や上司が少なからずいました。

 

しかし、昨今、仕事の仕方は多様化してきており、私の会社もそれを認めています。就業規則も改善され、家族の看病や育児のための休業が許されるようになりました。転勤や海外駐在の発令に際しては家庭の事情が考慮されるようになりました。また、社員のメンタルケアも充実しつつあります。

 

そのように、昔の有様を知っている人間からすれば、会社の制度は格段に改善されてきたのですが、それでもなお、ワークライフバランスの維持に四苦八苦している社員がいることも事実です。心の病を患う社員も一定数存在します。

 

苦しんでいる社員は、総じて真面目で、仕事の“達成イメージ”が非常に高いです。彼ら・彼女らは、とても優秀で、潜在能力はあるはずなのですが、共通して時間管理と“手抜き”が苦手です。

 

今や会社は、時間外勤務を極力避ける労務管理を行なっています。そうなると、各社員とも1日約8時間の中で、如何に効率良く仕事をするかが“腕の見せ所”となります。しかし、ひとつの仕事に拘り過ぎていては他の仕事が疎かになってしまいます。英数国理社の試験で、英語だけ満点、他は赤点、では落第です。逆に全て満点を取らなくても、及第点をクリアしていれば進級は出来ます。

 

仕事も然り。もっと言えば、仕事で百点満点と言うのはあり得ず、及第点で良いので期限に間に合うことの方が重要です。〆切過ぎの満点答案よりも、赤点ギリギリでも〆切に間に合わせる方が、実務では現実的な対応となります。ヒラ社員の作った資料は上役が手直しするものだと言うくらいの開き直りがあった方が良いのです。

 

ところが、真面目な社員はひとつのことに拘り過ぎてしまったり、あるいは、全てを完璧に仕上げようとして、かえって中途半端なものしかできなかったりと、能力を発揮しきれず、それが自己嫌悪や自己評価を下げる原因になっています。

 

自分を過剰評価するのも頂けませんが、過小評価することも良くありません。むしろ、自分を過小に評価することは、実力発揮を阻害し、悪い結果を引き寄せることが多分にあることから、自分を過信するよりも良くない傾向かもしれません。

 

仕事を忘れる勇気

もうひとつ、真面目社員に関する気がかりは、四六時中仕事のことばかり考えていることです。

 

すでに私の部署を離れた社員ですが、彼女は優秀で、気配りもでき、仕事の成果は申し分無かったのですが、いつプライベートな時間を過ごしているのだろうかと心配になるくらい、仕事のことばかり考えているようなタイプでした。

 

私は、彼女が異動してきた直後は、そのような寸暇を惜しんで仕事をしてくれることに対して、頼もしく思いましたが、夜討ち朝駆け、週末まで全部員に業務メールを送るのを見て、これは止めなければと考えました。他の部員と彼女の関係も悪化していきました。

 

確かに、緊急性の無い、週明けに相談すれば済むことを週末にメールされて、喜ぶ者はいません。また、平日でも、日付が変わろうとしている時間帯にメールを送られてくると、メールを受け取った方としても気が休まりません。

 

彼女と話して分かったことは、彼女は仕事のことを考えていないと不安で堪らないということでした。家に帰っても仕事のことが頭から離れないそうなのです。その話を聞いて、会社が時間外労働を禁じても、彼女のようなタイプの社員は仕事をしてしまうのだと思いました。

 

私は彼女のやる気を殺がないよう、オンとオフをの切り替えをすることと、平日時間後と土日のメールは原則止めるように伝えたのですが、どうやら、彼女は心の底から納得できなかったのでしょう。人事部も巻き込んで別の部署への異動の話も持ち上がりましたが、結局は彼女から退職を申し出てきました。彼女は、入社三年半、私の部署に異動して5か月少々で会社を離れていきました。やる気の無い社員に発破をかけるのも大変ですが、度を越したワーカホリック社員の扱いも簡単なことではありません。

 

今、私の部署では、平日の時間後や週末は原則メール禁止にしています。緊急の場合は電話で連絡を取り合うこと。金曜の夕方などに、「週明けに忘れないように」などの理由で、月曜日に話せば済むことをメールしない、など、少し細かいルールを決めました。

 

会社を離れている時間は仕事のことは忘れろ、メールは見るな、くらい強く言って、そのような環境を作ってあげないと、真面目な社員は週末も携帯電話を手放せないのです。

私の部署は、時間外のメール禁止をルール化して一年以上経ちますが、すこぶる評判は良いです。他の部から異動してきた社員は、最初は少し戸惑うようですが、会社から一歩出たら仕事のことを忘れることができるだけでも、イライラの芽の成長を食い止める役に立っているようです。

 

もっとも、メールを封じても、つい余計なことを考えてしまう人もいるでしょう、私も例外ではありません。座禅でも組んで無の境地にたどり着くことが出来ればいいのでしょうが、それは無理なので、私の場合、週末はいろいろな予定を入れて忙しく過ごしています。何もやることが無ければ、家の掃除をして雑念を振り払っています。何かに集中している間は、イライラの原因を忘れることが出来ます。

 

もし、イライラしている自分に気がついたら、自分の好きなことに集中してみましょう。きっと楽しい時間を過ごせるに違いありません。