本心はどこにある? (2)

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独りの世界

思考実験と言うほど大袈裟なものではありませんが、野中の一軒家で独り暮らしをすることを空想してみます。

 

食料を始め、生きて行く上で必要な物は全て整っています。何か買い物がしたければ、通販で手に入れられます。訪れる客はいません。他者の目を気にする必要もありません。何をしようと文句を言う者もいません。また、ブランド品を身に着けても、見せびらかす相手がいません。

 

家から一歩も出なくても、誰とも付き合わなくても生活できる環境に身を置いたと仮定して、自分だったらどのように生活するかをイメージできるでしょうか。

 

身だしなみを気にする必要が無いわけですから、散髪もお化粧も不要。服に気を使うことも不要です。仕事をする必要が無ければ、何時まで起きていようと、何時まで寝ていようと自分の勝手です。

 

そのような空想をしてみると、自分が実はとんでもなく怠惰なのか、自律的な人間なのかが分かってくるのではないでしょうか。ちなみに、私はどちらかと言えば怠け者に属するようです。

 

他者の目を気にする必要が無い、見栄を張る必要が無い状況に身を置いて、これが自分だと思える姿が素の自分なのではないかと思うのです。

 

例えば、独りで生活全てが完結し、何の不自由も無いのであれば、勉強なんかしたくない、就職なんかしたくない、という考えが湧いてくるかもしれません。また、誰かと付き合うことも、ましてや結婚もしたくない、独りの方が気ままだ、というのが素の自分なのかもしれません。

 

あるいは、逆に、本当の自分は、実はこういう学問を極めたかった、こういう仕事がしたかったと言う思いが湧いてくるかもしれません。また、独りの方がきままだと強がっていたけれど、本当は誰かそばにいてほしい、というのが本当の自分なのかもしれません。

 

見栄を張る相手がいないのであれば、本当は高い車なんか買いたくなかった、高いブランド品なんか欲しくはなかった、こんなことにお金を使いたくはなかった、というのが本音かもしれません。

 

こうして、素の自分が語り始めると、ときとして、自分の弱音に触れることがあります。「平静を装っているけれど、今こうして頑張っているのは、自分自身に対してかなり無理を強いている。けれど、そんなことは、どんなに親しい間柄、自分の家族にさえ言えないこと、言いたくないことだ、そんな弱音を吐くなんて恥ずかしい」 ‐ そんな泣き言を素の自分が白状するかもしれません。

 

しかし、“そんな泣き言”こそ、ありのままの自分の思いに違いないのです。そこまで自分に正直になって、初めて“素の自分”にたどり着くのだと思います。

 

理性や道徳心を抜きに、この世で生きて行くことはできませんが、素の自分にたどり着けないと、自分の軸足が定まりません。自分に正直になることは、なにも怖いことではありません。

 

再び自分のものさしを考える

親が承諾しないという理由で、結婚を先延ばしにした者は、相手から愛想を尽かされました。また、すでに関係が破綻しているのに体裁を気にして離婚しない夫婦は、お互いに負の感情を抱いたまま暮らしています。仕事が忙しいからと、反抗期の子供の面倒を全て妻に押しつけていた者は、妻に逃げられました。

 

私の周りで実際に起こったことです。皆、貴重な時間を無駄にしているだけでなく、大切なものを失っています。早くに素の自分に向き合い、「どうしても結婚したい」、「一緒には暮らせない」、「子供を躾ける自信が無い」、と自分の本音や弱音を確かめることができれば、駆け落ちするなり、別居するなり、カウンセラーに相談するなり、それぞれの対応の仕方も変わってきたはずです。

 

素の自分を自分以外の人にさらけ出す必要は無いとは思いますが、少なくとも、自分に嘘を吐くことだけは止めた方が良さそうです。素の自分を封印して、仮の自分を演じ続けることは知らず知らずのうちに、自分に無理を強いていることになります。

 

素の自分に耳を傾け、自分に正直に物事を判断する。とは言え、そこには理性や道徳心と言うブレーキが必要だということは、前回の記事に書いたとおりです。素の自分と理性・道徳心がうまくかみ合うことによって自分のものさしが出来上がるのではないでしょうか。

 

本心を見つめる時間を作る

私は最近になって、毎晩、寝る前の10分前後を一日を振り返る時間にしました。その日誰かと交わした会話で自分の言ったことは本心だっただろうか、とか、適当に相手に調子を合わせていなかっただろうか、などと考えると、1日の中で自分に嘘を吐いていることが意外に多いことに気づかされます。

 

日々忙しく暮らしていると、自分の本心など二の次で、目の前の仕事を片づけるだけで時間が過ぎて行ってしまう、と言う人が多いと思います。

 

しかし、1日5分でも10分でも、素の自分が今何を考えているのかを、確認する時間は確保したいところです。自分の心との対話から、本心や弱音を知っておくと、何かの決断を迫られた時の判断基準を常に身に着けておくことができるのです。