和尚さんの水飴

老後の前のハッピーアワー

コミュニケーションツールは変われども

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やりっ放しは責任逃れ

我が家の大学生の娘、現在アルバイトで学習塾の講師をしております。高校時代は、人に指図されることを最も嫌い、学校の先生や親のアドバイスは一切聞き入れませんでした。それが、今や“教え魔”に変身してしまいました。毎日夜遅くまで授業に使う教材を予習して、自分なりに教え方を考えているようです。

 

まだ塾の教室は再開しておらず、授業はオンラインのマンツーマン方式。娘は1コマ45分、1日あたり2~3コマの授業を受け持っています。授業の予約は塾の庶務を担当する部署で行なって、各講師にそれぞれ授業が割り当てられる仕組みのようですが、ときにダブルブッキングになったり、すっぽかされたりして、人には厳しい娘としては、時間管理の不徹底が気に入らない様子。

 

先日、娘の愚痴を聞いた私は、彼女に一つ提案しました。授業の前日に、庶務に次の日のスケジュールを再確認すること。そして、もし、可能であれば、生徒に次の授業の日時をリマインドしてもらうことです。ダブルブッキングやすっぽかしが、どちらの責任かはこの際関係ありません。それによって誰かにとっての無駄な時間を防ぐことができるのです。

 

面倒くさがり屋の娘が不満そうな顔をしたので、ここで私の小言が始まりました。

 

かつて私が若かりし頃、先輩に口酸っぱく言われたのは、「言いました、やりました、ではダメ。相手を動かさなければ仕事をしたことにならない」と言うものでした。誰かに仕事をお願いするにしても、お願いしただけではダメで、成果物を手に入れるまでが自分の責任。会議や打ち合わせも、場所や時間を設定して関係者に出席を依頼するだけではダメで、前日には出席の念押しをする、というように、仕事が完了するまで自分が責任を負うと言うことでした。

 

今のご時世、いろいろと便利になって、アプリでスケジュール管理するのが当たり前、スケジューラーが親切にリマインドもしてくれますが、肝心の人間の方がそれに頼りっきりになって、時間にルーズになってしまっては元も子もありません。

 

結局、私のような古い人間は、アナログなやり方から抜け出せないのだと思います。思い返すと、昔、会社で出張の手配を担当していた頃、上役や役員のホテルやフライトを予約して、直前にわざわざ電話で予約の再確認をしたものでした。当時は航空券は出発の1日あるいは2日前までに“リコンファーム”するように言われていました。

 

今では何の予約でもオンラインでできてしまうので、そのような余計な手間をかけるのは馬鹿げているのかもしれません。

 

さて、私の小言ですが、塾からは、生徒への事前の念押しは人手が足りないことを理由に“却下”されたとのこと。いい提案だと思っていた私としては、ちょっと悔しい思いです。

 

ドキドキを味わうのは悪くない

今のように携帯電話が当たり前となり、コミュニケーションアプリでやり取りすることが普通になると、待ち合わせをすっぽかされたりすることがあまり無くなりました。

 

携帯電話が普及していなかった時代では、待ち合わせをしたのに待ちぼうけを食らったり、お互い会えずにすれ違ったりということが珍しくありませんでした。家を出てからでは、待ち合わせの時間や場所をお互いに再確認する術を持ち合わせていなかったのです。

 

本当に会いたい相手とは、前の日に家の“固定電話”で時間と場所の確認をしました。中学の頃、当時付き合っていた彼女と連絡を取り合うには、リビングルームに誰もいないことを確認してから、こっそり電話をかけます。電話をして、相手の親が出たりすると、緊張しながら彼女に電話を取り次いでもらう・・・そういうドキドキ感は、今の若い人は味わえないのでしょうね。そんな話を娘にしたところ、そんなの絶対嫌だと一蹴されました。自分の彼氏と親と話などさせたくないそうです。

 

一方で、娘は、今は24時間ずっと誰かに監視されているような気がして落ち着かないというようなことも言っていました。コミュニケーションアプリで友人からメッセージを受け取ると、できるだけ早く返事をしないと相手の気分を害してしまうことがあるようです。私など、仕事以外なら、メールだろうとショートメッセージであろうと、そんなに返信を焦る必要は無いのではないかと思うのですが、娘曰く、返信の早さが自分をどれだけ大切に思っているかのバロメーターなのだそうです。何となく私としては、ついて行けない話になってしまいました。

 

人の気持ちは今も変わらず

ところで、テレビでは、コロナ禍の影響で最新ドラマの撮影が思うように進まないため、昔のヒット作を再放送しています。テレビをあまり見なくなった私ですが、なつかしさのあまり、つい見入ってしまうドラマもあります。

 

その一場面に、お互いの自宅にあるファックスでやり取りをするシーンがあります。主人公は聴覚に障害を持っているため、電話での会話ができません。そのファックスは、コミュニケーションアプリと同じような使い方で、紙にしたためた文字で“会話”をしているのです。ただ、アプリと違って、やり取りには時間がかかります。見ていて非常にもどかしさを感じるのですが、それがこのドラマに引き付けられる魅力なのでしょう。紙に書いた文字や手話でのやり取り、うまく気持ちを伝えられなかったり、誤解が生じたりと、見ている者にもどかしさを感じさせ、思わず二人を応援したくなる、そんなドラマなのです。

 

ドラマでは、二人はファックスでのやり取りの後、お互いに会いたい気持ちを抑え切れずにそれぞれの家を飛び出して、すれ違いになってしまうのですが、好き合っている相手にすぐにでも会いたい、と言う気持ちは今も変わらないのではないかと思います。もし、すぐに会える相手なら、アプリではなく直接会って話をした方が気持ちは伝わるのではないかと…思うのはアナログ人間の私だけでしょうか。