休みも仕事のうち

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家族のことに気が回らないとしたら

仕事が忙しくて家族のイベントに参加できない。私の勤め先でも、ひと昔前まではそんな愚痴をよく耳にしました。例えば、子供の運動会。土日の混み合いを避けて平日に開催する学校が多くなったため、仕事を持つ親御さんは休みを取って運動会を見に行くことになります。しかし、仕事の都合がつかずに子供の活躍する姿を見ることができないという者が多かった気がします。私も、娘が小学生の頃の運動会をまともに参観した記憶がありません。

 

現在、幼稚園児や小学生の子供を持つ部下には、予め学校の行事などを聞き出しておいて、その日は必ず休みを取らせるようにしています。その他、家族の誕生日や結婚記念日など、なんでもいいのですが、この日は休みたいという日を部員たちに挙げさせて、部内で情報共有します。少なくとも私の部では、家族のイベントを優先に仕事を組むようにしています。これは、以前記事にも書きましたが、私自身の反省がきっかけになっています。

 

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仕事でどんなに忙しくても、いや、むしろ忙しい時ほど、オンとオフの切り替えが大切なのです。帰宅して夕飯を食べている最中に、明日の仕事の段取りなどを考えていたら、食べ物の味も分からないのではないでしょうか。子供と遊んでいる時でも携帯電話を脇に置きメールのチェックをするようでは、せっかくの子供との時間を楽しむことができません。

 

もし、仕事が原因で家族のことに気が回らないとしたなら、仕事への取り組み方を考え直した方が良さそうです。

 

仕事と家庭のバランス

私の部では、就業時間外はメールを読まないというルールにしています。平日の夜や週末は予め重要な仕事が回ってくることを知っている場合を除きメールは見ません。部下たちには、家では家族のことだけを考えてもらいたいのです。

 

私が海外駐在から本社に戻ったばかりの頃なので、かれこれ5年余りも前の話です。部下の中に、仕事が捗らず休日出勤して遅れを取り戻そうする者がいました。優秀なのですが、他人に弱みを見せたがらないタイプの男で、不慣れな仕事を一人で抱えて苦しんでいました。

 

とある金曜日の夕方、彼が私のところにやって来て休日勤務を申し出ました。さすがに休日出勤も3週目。私も黙っていられません。確か彼のところにはもうすぐ1歳になる女の子がいたはず。私は、余計なお世話だと知りながら、奥さんが独りで家事と子育てをやるのは大変ではないのかと尋ねました。彼は俯いたままです。

 

彼はなかなか重い口を開きませんでしたが、常に仕事のことで頭が一杯の状態にあることをようやく認めました。その姿が昔の自分と重なります。彼に任せた仕事の締め切りはまだ少し先でしたが、ここまでの進み具合を確認してみると、根本的な部分を理解せずに手をつけてしまっている部分が多く、細部を修正するよりも最初からやり直した方が早いくらいの内容でした。

 

そこで、私は彼に週末の出勤は認めないこと、翌週は溜まっている代休と有休を使って1週間休むように言い渡しました。私は、「聞いてこないから、きっと分かって仕事をしているのだろう」というのはまずかったと反省しました。特に彼のようなプライドの高い男は、誰かに頭を下げて教えを乞うということがなかなかできないのです。

 

彼には、休暇中は会社のメールは見ないことと、家事・育児に専念するように言い含めました。私のすぐ下で働いている係長級の男と私とで、休暇中の彼の仕事を割り振りましたが、係長級はそんな私の対応を“若手を甘やかしている”と受け取ったようです。自分が彼くらいの歳の頃は毎晩徹夜で仕事をした、あるいは、自分はこんなに苦労をしてきたのだから彼も同じくらい苦労すべき、とでも言いたかったのでしょうか。

 

当時、「ワークライフバランス」などという言葉は今ほど流行ってはいませんでしたが、四六時中仕事のことしか考えられなくなっているようでは、家族との間もうまく行かなくなり、それが仕事のパフォーマンスにも影響を与えることにもなりかねません。仕事も家族もどちらも大事。どちらかにしわ寄せがいかないような工夫が必要です。どうしてもバランスが取れないと言う場合には、家族第一です。仕事は誰かが代わりにやってくれます。

 

休みも仕事のうち

その後、チームの中では事ある毎に、できるだけ有給休暇を使って家族のイベントに参加するように促すことにしました。忙しくてなかなか有休消化できないという者もいましたが、同僚に予め“休暇宣言”させて、お互いにサポートし合える環境作りに努めました。

 

私が若い頃には、休暇を取ろうとすると、上司は「仕事の方は大丈夫だろうな?」とよく訊かれました。また、同僚からも“この忙しい時に休むのか”、とか“俺だって休みたい”という雰囲気が漂い、気持ち良く休暇を取れない状況でした。しかし、もうそんな時代ではありません。

 

当時私は課長でした。私のチームが、私も含めて積極的に休暇を取り始めたため、上司である部長が不安に思ったのでしょう。決して嫌味ではないと思いますが、「仕事は大丈夫なのか?」と聞き覚えのある言葉を私に投げかけました。

 

私は、上司にもできるだけ休暇を取るようにお願いしました。上の人間が休まないと部下も休みづらいからです。また、仕事に必要以上のクオリティーを求めないことも提案しました。仕事は基本的に就業時間内に完了させる。成果物が期待通りのものであればそれを受け入れる。余計な“改善”は施さない。せっかく業務を効率化して時間的な余裕ができても、上から“よりいいモノ”を求められれば、さらに手間と時間がかかってしまいます。それではいつまでたっても、ゆとりが生まれません。

 

上司は分かったような、分からないような微妙な顔つきのまま自分の席に戻りました。世の中、便利になれば仕事が減るはずという思いとは裏腹に、何故か仕事が増えるのは、空いた時間に余計な仕事をさせようとする上の人間の責任です。仕事は余裕をもってできるくらいがちょうど良く、余裕のある時に休む。休みも仕事のうちです。