老後生活のヒント 朽ち果てないために (2)

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暇過ぎて死ぬ

リタイア後の生活をエンジョイしている先輩。仕事で完全燃焼し、これから老後生活を迎えようとしている先輩。お二人の人生に取り組む姿勢は大変参考になります。

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そして、三人目。Nさんは社内でも変わり者で有名な方でした。Nさんに関するエピソードは枚挙に暇がないのですが、有名な話の一つはこんなものです。Nさんがまだ新入社員だった頃、ある社員のご尊父が亡くなり、葬儀の手伝いに駆り出されました。葬儀後、会葬御礼のいわゆる“葬式饅頭”が余ったため、それをご遺族から買い取り(!)、単身寮で売りさばいたのでした。まさかと思い、以前直接本人に尋ねると本当の話のようでした。

 

Nさんの逸話はこんなものばかりで、社内では吝嗇家で通っていました。しかし、上の者に対して歯に衣着せぬ言動は一部の後輩社員からは人気で、社内にはNさんの“隠れファン”がかなりの数存在していました。

 

そんなNさん、長く独身生活を謳歌してきましたが、40代半ばで結婚されました。結婚式は挙げず、会費制のパーティーを自分で企画しました。日頃Nさんのことを良く思っていない社員は欠席していましたが、若手中心で盛り上がった会となりました。しかし、当日のビュッフェは何とも貧相なもの。きっと会費の大半はNさんの懐に入ったのでしょう。

 

Nさんは50歳の誕生日を迎えたその月に早期退職しました。伊豆のマンションで奥様と暮らしているNさんは、自宅以外にもいくつか投資用の物件を所有しており、家賃収入で生活していくのだと言っていました。まさに悠々自適の老後生活です。

 

その後、Nさんとはしばらく音信不通でしたが、数年前に都内にあるデパートの食品売り場で偶然遭遇しました。今は都内のマンション暮らし。奥様は?との私の問いには答えず、「暇で死にそうだよ」と自嘲めいた笑みを浮かべました。こちらがお茶に誘うも、「今日はちょっと」と言って足早に去って行ってしまいました。死にそうなくらい暇なはずなのに。Nさんに何があったのか気になりつつ私は買い物を続けました。悠々自適の老後生活。Nさんはきっとお金の面では苦労はしないのでしょうが、寂し気な後ろ姿を見るとこちらの気分も沈んでしまいました。

 

やりたいことが見つからないときは

自分の老後生活をどう送るかは自分で決めるしかないのですが、先輩方の生き方はとても参考になりました。趣味の世界で老後生活を楽しんでいるFさん。好きな仕事で完全燃焼し、これから異国での老後を迎えるTさん。Nさんはお金には苦労していないのでしょうが、生きていく楽しみをまだ見つけられていない様子。

 

老後を一文無しで過ごすわけにはいきませんので、貯蓄や年金は欠かせません。若い時から準備しておくに越したことはありません。

 

しかし、一方で、自由に使える時間が増える定年後に、何もやることが無いとなると、これはまた大問題です。65歳で引退し、仮に90歳まで生きるとすると、老後は25年間にも及びます。お金の心配が無くても、それだけでは老後生活を楽しむことはでき無さそうです。

 

自分が思っている以上に老後という時間は長い可能性があります。その時間のうち、どれだけ健康的に活動できるかは知る術もありませんが、一生つき合っていける趣味や、ライフワークを見つけることはとても重要です。

 

そんなことは分かっている。でも何から始めたらいいのか分からない。そういう人は結構私の周りにもいます。しばらく前に、取引先のカウンターパートで退職のご挨拶に来られた方がいました。これまでの仕事の重責を解かれ、非常に晴れ晴れとした良いお顔をされていました。

 

私が、第二の人生はどうされるのかお聞きすると、その方は、これまで仕事に追われて無趣味を通してきたので、何から始めたらいいのか分からないと言います。奥様はまだお仕事をされているようなので、自分独りで一日家で何したらいいのか。「どうしたらいいんでしょうかね?」と、私が逆に質問を受けてしましました。

 

その時私は、“もし一日家にいるのであれば”という条件で、家の中の掃除をしてみてはとアドバイスしたことを覚えています。人に向かって家の掃除をしろ、とは失礼に感じられる方もいるかもしれません。しかし、家の隅々まで掃除をするのは、私の隠れ趣味かつストレス解消方法なのです。

 

例えば、「今日は水回りの掃除」と決めたら、キッチン、洗面所、そして風呂場を徹底的に掃除します。蛇口の水垢やふろ場のカビ、鏡の曇り・・・これらをきれいにして磨き上げる。私は何か嫌なことがあった時には、掃除や洗濯など独りで没頭できることをやることにしています。そうすると、ストレス解消になるばかりでなく、全く突拍子もないアイデアが頭に浮かんで来ることもあります。それが、老後の生きがいにつながるヒントかもしれません。何をすればいいか分からない時には、“降りてくるのを待つ”のです。

 

何かに没頭するというのは、動的な座禅のような気がします。雑念やストレスから解放され、脳の引き出しから意外な掘り出し物が顔を覗かせるかもしれません。