母の空言に巻き込まれた話

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その場しのぎ

気乗りしない遊びに誘われて、「その日は別件があるから」と断ったり、仕上げる自信もないのに、「明日までにやっておきます」と安請け合いしたり。その場しのぎの嘘は決して褒められたものではありませんが、誰でも経験があると思います。

 

逆にそのような嘘を吐かれたことも経験があるでしょう。いずれにしても、目くじらを立てるほどのことではないと済ませればいいのですが、実際に自分に害が及ぶような嘘となると見過ごすわけにはいきません。ましてや、身内にそのような人間がいると、時にその尻ぬぐいに思わぬ苦労を強いられます。

 

私の母親の話です。気前の良いことを言っておいては、ほとんど守られない約束。それを悪びれる風も無く同じことを繰り返すのでした、物心ついた頃からそのような母親の姿を見てきた私にとっては、それが“普通”であり、悪いことだと気がついたのは小学校の高学年になってのことでした。

 

「今後買っておくね」、「今度の日曜日に行ってみようか」。子供心に、これはおねだりからうまく逃げる方法なのかもしれないと思ったこともありましたが、母が誰に対しても調子の良いことを言い、それがほとんどその場しのぎで守れない約束をしているのだと知ると、もしかしたら、自分の母親はちょっと変わっているのではないかと怪しむようになりました。

 

しかも、それは年々酷くなり、安請け合いだけではなく、嘘の上塗りのような言動が目立ち始めました。母の嘘は枚挙に暇が無いのですが、私が大学生の頃に吐かれた嘘が一番ショックでした。

 

軽い嘘が大騒ぎに

両親との折り合いが悪く、私は高校卒業と同時に独り暮らしを始めていたのですが、ある日母方の伯母から電話を受けました。伯母には小さい頃から可愛がってもらっていましたが、中学、高校と歳を重ねるに連れ疎遠になっていました。そんな伯母からの久しぶりの電話でしたが、電話を取るや否やものすごい剣幕で捲し立てられました。話の内容が要領を得ないため、順を追ってもう一度話を聞きました。

 

伯母の話によると、私の母から2年ほど前に電話があり、私が自分の運転する車で人を撥ね大けがを負わせたという話をしたのだそうです。損害賠償と車の修理費を払う金も無く、泣きつかれて自分(母親)が工面した。家の方も父親の事業がうまく行っていないので生活が苦しい。そんな話を聞いた伯母は、母にかなりのお金を貸したのだそうです。年金暮らしの伯母にとってそれは決して余っているお金ではなく生活資金の一部です。しかし、自分の妹が困っていると思い、何とか都合をつけてくれたのだそうです。

 

それ以来、何度か母にやんわりと返済を求めてきたのだそうですが、のらりくらりとはぐらかされ、いよいよ堪忍袋の緒が切れたということでした。また、そもそもの原因が私にあると思った伯母は、母を詰問して私の電話番号を聞き出し、直接私に返金を求めてきたというのが事の顛末でした。

 

伯母の怒りは凄まじく、私の話に聞く耳を持ちません。その月の末までに耳をそろえて返金するように言うと、一方的に電話を切られてしまいました。私はしばらく事態が飲み込めず茫然としていましたが、やがて母への怒りが湧き起こってきました。

 

約3年、親に電話すらしてこなかった私です。母親と話をするのも嫌でしたが、このまま放置するわけにもいかず、アパートの部屋を飛び出して実家に向かいました。そもそも車を持っていない私が、事故を起こせるはずも無いのです。口から出まかせにしては質が悪過ぎます。

 

たしか土曜日か日曜日の昼過ぎだったと思います。実家に乗り込んだ私を迎えたのは父でした。母から事情を聞いていたらしい父は、私に、伯母への返済は何とかするから母を責めないでやってほしいと頭を下げます。母は奥の部屋で寝込んでいると言います。父の話では、たしかに台所事情は良くないが、母は伯母から金を借りるつもりはなかったとのこと。父が察するに、母は伯母の同情を引こうと“つい”私が事故を起こして大変なことになっているという作り話をしてしまったのではないか言いますが、私には全く納得できないことでした。

 

私は父に、伯母に対して本当のことを全て話すように言うと実家を後にしました。滞在時間わずか30分。自分の息子を加害者に仕立て上げることまでして、伯母から金を引き出したことに、後から後から怒りが込み上げてみました。

 

癖は治らず

母のこのような“癖”はこれで終わらず、調子の良いことを言っては周囲を困惑させることが続きました。「また始まった」とやり過ごせる軽い嘘もあれば、「何度言ったら分かるんだ」と頭にくることまで様々です。以前、別の記事で書きましたが、母はもう一人の伯母に、伯母の息子(私の従兄)の新築費用を一部援助するという“安請け合い”をして一騒動起こしています。

 

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適当な言葉を軽々しく吐く者は、窮地から逃げるために後先を考えずに出まかせを言ってしまうようです。また、軽い嘘でその場を取り繕うことに成功すると、次第に大きな嘘を吐くことに対する罪悪感が麻痺するのではないかとも思います。

 

私の母が何故そのような人間になってしまったのか。たしかに、若い時から、周りにちやほやされたいという傾向はあったのかもしれません。自分は主役、周りはわき役。現実の生活の中で自分に関心を寄せてもらいたいという思いが、無意識に安請け合いや嘘を吐いてしまう原因だったのかとも考えています。私を事故の加害者にしたのも、自分が悲劇のヒロインになりたかったからなのかもしれません。

 

と、ここまで書いてふと気がつきました。そう言えば、ここ何年かは母の“出まかせ”で私がトラブルに巻き込まれたことが無くなったと。もう自分が主役を張れないと悟ったのかもしれません。