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社風は急に変わらない

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今更感が拭えないCI計画

1980年代のバブル期に、CI(Corporate Identity)ブームが起こりました。各企業が独自性を反映させたコーポレートメッセージ(企業スローガン)やブランド名、ロゴを作り、社会に発信することによって存在価値を高めるというイメージ戦略です。

 

顧客へのアピールもさることながら、就職活動を行う学生に対して、社風や企業文化を知ってもらうことは採用活動上重要な戦略です。また、社内においても、仕事を進める上で明確な行動指針は必要で、そのベースとなる企業イメージ(会社としてのあるべき姿、目指すべき理想像)を共有することは大事なことです。

 

さて、私の勤め先ですが、これまでCIに注力したことはありませんでした。大衆を相手にした商売を行っているわけではないので、積極的な宣伝活動も必要なかったのですが、株式上場を機にIR・広報活動も避けて通れなくなり、クリーンな企業イメージの維持に努めてきたというところです。それでもここまで積極的なイメージ戦略を立ててきたわけではありません。

 

ところが、ここにきて、業績の行き詰まりや若手・中堅社員の早期退職などの問題が浮上してくると、経営陣としては何が問題なのか気になり出し、解決策の一つとして行きついたのが「企業文化の構築」だったようです。問題の根本的な原因はそこではないと思うのですが、それはまた別の話です。

 

ということで、我が社も遅ればせながら、世間よりも2周あるいは3周遅れのCI活動開始と相成りました。

 

企業文化は誰が作る?

「企業文化の構築」と聞くと、設立間もない会社において、経営者の理想とする“あるべき会社の姿”を反映させた経営方針や社員の行動指針を一から作る、というイメージが目に浮かぶかもしれません。あるいは、旧態依然の会社にあって、経営陣刷新に伴って“新たな経営方針を反映させて時代に即した企業文化に改める”というようなことを想像されるかもしれません。

 

我が社の経営陣が発表する、新たな企業文化・行動指針というものがどのような内容になるのか気になっていたところ、管理部門から、“トップの方針として”社員全員参加で行動指針を作るよう指示がありました。

 

これを聞いて拍子抜けした社員は少なくないはず。「ボトムアップで作ったものであれば、出来上がった行動指針が何であれ、誰も文句は言うまい」、「社員にアイデアを出させていいとこ取りしよう」などという狡猾な考えがあってのことかどうかは分かりませんが、自ら行動方針の原案すら示せない経営陣の姿勢そのものが、変えていかなければならない社風なのではないかと思った次第です。

 

我が社には古くから「社訓」があります。これは、数代前の社長自らが作ったものです。思うに、その時の社長は明確な経営理念を持っていたのでしょう。それと比べることの是非はともかく、今の経営陣が企業文化や行動指針の原案作りを社員に丸投げしてしまう様は、見ていて頼りなさを感じざるを得ません。

 

立派な行動指針は役に立つのか

理由はどうであれ、「企業文化」や「行動指針」というテーマで、部内や部署横断で話をする機会など今までなかったので、老若男女で喧々諤々の議論を戦わせることができたのは、非常に有益だったのは間違いありません。

 

しかしながら、私には気がかりなことがあります。盛り上がっている議論に冷や水を浴びせることにもなりかねないので、これはうちの部でも話には出していませんが、大勢で作ったものは、“最大公約数”的な、どこから突いても文句が出ないようなものになりがちです。もっと悪い言い方をすると、どこの会社でも思いつくような陳腐なものになる可能性が高いとも言えます。そうならないよう、最後は経営陣が当社らしいものに仕上げてもらいたいと思っています。

 

もう一つ。例の「社訓」、今となってはそれを知る者は社内でもほとんどいません。私が入社した頃は、新入社員研修で社訓を唱えさせられましたが、今はそのような研修も無くなってしまいました。

 

それを考えると、どんなに立派な「行動指針」が出来上がったとしても、社内に浸透しなければ意味をなさず、また、浸透した行動指針が代々受け継がれずに忘れ去られてしまっては、「社訓」の二の舞になってしまいます。

 

何でも議論できる経営陣が必要

「行動指針」作りは道半ばであり、どんなものが出来るかは分かりません。ただ今回私が知ったことは、年代や性別に関わらず共通の関心事があれば、みな熱心に人の意見に耳を傾け、議論にも積極的に参加するということです。

 

今回の“押し付けられた”「行動指針」作りでも、社員は積極的に取り組んでいます。それは、他人事ではないからです。自分たち自身で自分たちの行動に共通の価値観を持たせようとしています。

 

社員にできて経営陣にできないことはないと思います。社内に山積する問題の解決を事務局任せにせず、役員同士でひざを突き合わせて議論してもらいたいと思っています。