和尚さんの水飴

老後の前のハッピーアワー

老後の不安を少しだけ取り除く(続)

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家計調査報告を少しだけ深掘りしてみる

先日以下の記事で「老後2000万円問題」の数字の出所について触れました。
lambamirstan.hatenablog.com

 

老後の30年間で約2,000万円の不足。月額に直すと約5.5万円のマイナスとなります。

この5.5万円の赤字というのは、総務省の家計調査報告(2017年)が基でした。

 

この報告の「可処分所得」は180,958円、 「消費支出」は235,477円となっています。上記の記事では、受け取る年金額は加入している公的年金の種類や納めている保険料により開きが大きいので、調査報告にある“平均の数字”では役に立たないと書きました。しかし、「消費支出」だけ見てみるとどうでしょうか。無職の夫婦がひと月に使うお金の平均であれば、“受け取り年金額の平均”よりは、参考になるような気がしませんか? 

 

「消費支出」の中の項目を見てみると、「生きていくために必要なコスト」と「趣味・嗜好のためのコスト」に分かれます。前者は衣食住と医療費、交通・通信費が主なものです。気になったのは、住居費(家賃・地代と設備修繕費等)が約1.4万円となっているところ。持ち家派と賃貸派の平均ということでしょうが、賃貸派の住居費はもっと額が膨らむでしょう。また、持ち家派も、年金受給年齢到達後もローンが残っている場合はその額を考慮しなければいけません。賃借料や住宅ローン返済を考えると、実支出はもっと増えることになり、あくまでも“平均”の話ではありますが、不足額は月5.5万円よりも多くなります。

 

住居に関しては、持ち家派と賃貸派でどちらが得か損かという果てしない(?)議論が続いていますが、ここではそれには踏み込みません。賃貸派は、収入に応じて住居を移せる自由度がありますが、持ち家派の場合、年金受給年齢以降も住宅ローンを残してしまうのは、不安を抱えたまま老後を迎えることになってしまいます。繰り上げ返済等により、できるだけ早く完済を目指す必要があると思います。もちろん、年金額の中で返済が可能であればこの限りではありません。

 

さて、「趣味・嗜好のためのコスト」のように見えるものとして、「教養娯楽」、「諸雑費」、「交際費」が挙げられます。この3つの項目を合計すると、約7万円になります。どのような支出がこれらの項目に該当するかは、総務省統計局が項目の分類と内容の例示をしています。ここでは具体例を列挙することはしませんが、リンク先を参照してみてください。

統計局ホームページ/家計調査 収支項目分類及びその内容例示(平成27年1月改定)

 

いずれにしても、収入にゆとりがあれば、これらの項目の支出も増えるものと思われるので、逆に言うと、節約できる余地もかなりありそうです。極端な話、完全に支出をカットしても生きていくには困らないということです。とは言え、老後の生活で、一切遊びに出歩かない、趣味のものを何も買わないなどということは無いと思います。趣味や楽しみを絞り込むことで、あまりお金をかけなくても生活に潤いを持たせることはできるのではないでしょうか。ここでは、仮にこれら3項目の支出を半分にカットしたと仮定しましょう。そうすると、約3.5万円節約できます。

 

あくまでも“平均”の数字の話であり、また、非常にざっくりした計算ではあるものの、毎月の赤字、5.5万円が2万円にまで圧縮できます。毎月2万円の赤字だったら、もうひと頑張りすれば解消できそうな金額ですし、老後30年として考えても、▲2万円 X 12か月 X 30年 = ▲720万円程度の赤字に収まります。

 

足りなくなると分かっているなら

いきなり、老後のために2000万円準備しろ、と言われると面食らってしまうかもしれませんが、700万円だったらどうでしょうか。大金であることには変わりありませんが、かなりハードルが下がったはず。現在35歳の方なら、これから毎月2万円を年金受給開始年齢の65歳まで貯金し続ければ、利子が付かなかったとしても720万円を貯めることができます。毎月2万円、1日700円足らずです。これなら、ちょっとした工夫で何とかなる金額ですよね。貯金の道は塵積って山となる - チリツモ - です。

 

具体的な金額が掴めなくても、将来、年金だけで老後の生活を送るのが心許ないということが分かっているなら、対応あるのみです。2000万円は無理だとしても、できる範囲で始めることが大切です。しかも、若いうちに始めればそれだけ楽なのが貯金です。定年まであまり時間がないという方は若い方に比べれば不利ですが、少しでも貯蓄額を増やしておくことで、老後に働き続けなければならないとしても、収入目標を下げられれば、それだけストレス軽減になるはずです。

 

若い方にとっては、老後などまだまだ先のことなので、貯蓄に対するモチベーションもあまり持てないと思います。しかし、自分でお金を稼ぐようになったら、少しでも貯金をする習慣をつけることは得をすることはあっても損にはなりません。老後までの時間がたっぷりあるからこそ、楽に準備が進められるのです。この時間的なメリットは、後から取り戻すことのできないものです。