元気な老後は意外と短い

 

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高齢者の雇用延長 年金支給開始引き上げ?  

少し古い話ですが、去る5月に政府は高年齢者雇用安定法改正案の骨格を発表しました。高齢者が希望すれば70歳まで働けるよう法律を改正するのだそうです。同改正案では企業に対して、「定年延長」、「定年廃止」、「契約社員での再雇用」を含めた7項目を努力義務として掲げています*。

 

高齢者の雇用延長は、労働力不足を補うため、というのが政府の説明ですが、本当の思惑が公的年金の受給開始年齢引き上げにあることは容易に想像がつきます。「70歳までの雇用義務化」と、「公的年金の70歳からの支給」が現実のものになるのもそれほど先の話ではなさそうです。  

 

老後の生活 健康寿命は意外と短い

今年の3月、厚生労働省健康寿命のあり方に関する有識者研究会 報告書を公表しました。https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000495323.pdf#search='%E5%8E%9A%E7%94%9F%E5%8A%B4%E5%83%8D%E7%9C%81+%E5%81%A5%E5%BA%B7%E5%AF%BF%E5%91%BD+2019'

2016年時点での「日常生活に制限のない期間の平均」は男性、女性でそれぞれ、72.14年、74.79年という結果です。

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(出典:健康寿命のあり方に関する有識者研究会 報告書)

 

年金支給年齢の65歳を老後の始まりとすると、「日常生活に制限のない期間の平均」までの残りの期間は、男性で7年余り、女性で10年弱です。あくまでも平均値の話とは言え、日常生活に制限なく暮らせる期間が意外に短いと思いませんか。

 

働けるうちに蓄えを増やして、老後は悠々自適に暮らしたい。誰でもそう望みます。仮に年金の支給年齢が70歳まで引き上げられたとしても、雇用が延長されるのであれば、生活に支障はないでしょう。かえって老後の蓄えが増えるかもしれません。人生100年時代、60代や70代なんてまだまだこれから、先は長いと思われている方も多いはず。私もまだ現役で働いています。今は自分の時間を犠牲にしてでも働いてお金を稼いで、年金受け取れるようになったら、いろいろなことにチャレンジしようと思っていました。でも、いつまで元気な生活を送れるのでしょうか。

 

ちなみに、私の父は66歳で他界しました。60歳手前で会社を畳み、老後生活を楽しめたのはわずか6年でした。私の母は現在78歳。数年前に膝の手術をして、今は杖を手放せない生活を送っています。片田舎でひとり悠々自適の毎日を送っていますが、お金の使い道と言えば、日々の生活のみ。だれか付き添いがいないと旅行に行ったり買い物に出歩いたりすることはできません。

 

老後生活を楽しむために  

もちろん、老後の生活をいつまでも若々しく送っておられる方もいます。

登山家でプロスキーヤー三浦雄一郎さんは86歳で南米最高峰の登山にチャレンジしました。残念ながら三浦さんの登頂は叶いませんでしたが、高齢者の方々にとっては大きな励みになったと思います。しかし、皆さんの周りを見渡してみてください。80代の老人はどのように目に映りますか? 元気に山登りをするような80代にはまずお目にかかれないのではないでしょうか。

 

自分のやりたいことは、気力と体力が充実しているうちに実行に移すべきです。私は今50代前半ですが、30代、40代、そして50代と体力の衰えを肌で感じます。定年になったらあれをやろう、これをやろう、と思い描くことはたくさんありますが、自分がやりたかったことを老後になってから全て実現できるか自信はありません。十分な蓄えがあっても、自分が病気や寝たきりになってしまえば、老後を楽しむことなどできません。「元気なうちは働きたい」、「できるだけ老後資金を蓄えたい」というお考えの方もいるでしょう。しかし、いざ引退した後、残りの人生を楽しむだけの気力と体力がなければ、何のために働いてきたことになるのでしょうか。

 

これまで私は、いわゆるアーリーリタイアメントやセミリタイアメントというものに共感を覚えなかったのですが、歳を取ったせいか、考え方が変わってきました。仕事での成功も人生を充実させるものの一つではありますが、会社での肩書など老後の生活においては何の意味もありません。今私は、普通のおじさんに戻った後の時間をどのように謳歌するかが大切だと思うようになりました。

 

*:その他4項目は、「他企業への再就職支援」、「フリーランスで働くための資金提供」、「起業支援」及び「NPO活動などへの資金提供」。


精神科医が教えるお金をかけない「老後の楽しみ方」 (PHP文庫) [ 保坂隆 ]