AI・DX 新しいテクノロジーは働きやすさをもたらすのか

 

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道具を使うのは人間

最近、私の勤め先でも、AI(人工知能)やDX(デジタル・トランスフォーメーション)の導入による業務の効率化を進める動きがあります。
業務の効率化。素敵な言葉です。私の勤め先でも、部署単位や個人で毎年の業務目標を立てるのですが、その際に、“効率化”という言葉が必ずと言っていいほど使われます。ヒューマンエラーの低減、働き手の負荷軽減、人件費の削減・・・。業務の効率化により、会社の業績が向上し、仕事をしやすい環境が整い、個々の社員のプライベートな時間も増える。AIやDXの導入が業務の効率化に寄与してくれることを願うばかりですが、そうはならないのが現実ではないでしょうか。新しい技術を生かすも殺すも我々の意識の持ち方次第であることを忘れてはならないと思います。
 

便利になったはずなのに

昔話になってしまいますが、私の勤め先でパソコンが1人1台あてがわれることになったのはもう30年近く前のことでした。当時私は、あるプロジェクトの事業経済性を評価する担当でした。学生時代にパソコンなど触れたこともなかった私は、導入当初こそ使い方に手間取りましたが、これまで手計算(!)で行っていた経済計算をあっという間に済ませてしまうパソコンに感激したのを覚えています。残業時間も大幅に減りました。
しかし、喜んでいられたのもごくわずかな期間でした。当時、そのプロジェクトは国からの出資と債務保証がついていたため、毎年の事業計画や新規の事業開発に際しては、その採算性を示す必要がありました。私の役目は、為替や生産物の単価を変動させた数パターンの検討結果を役所の担当者に説明することでした。ある日、その担当者から、「もう少し細かくリスク分析をしてみたい。為替や単価などパラメーターの組み合わせをあとで連絡するので、出来上がったら届けてほしい」という指示を受けました。
社に戻るとすでに先方からファックス(eメールなど無い時代でした)が入っておりました。パラメーターの組み合わせはなんと100通りを超えていました(本当の話です)。パソコン自体もOSもソフトも今の物に比べたら子供のおもちゃレベルです。あまりに情報量が多いとフリーズしますし、入力中にシャットダウンしてしまうこともよくありました。役所のリクエストにはその週の残りと週末を費やすこととなりました。その後、経済性の検討はより詳細なものが求められることとなりました。当たり前のことですが、道具が進化してこれまでの作業時間が短縮されても、要求が増えれば労働時間の減少にはつながりません。やや違う例ですが、人手が足りないと言って増員した部署で、かえって仕事が増えた、ということも私は実際に目にしています。自分の手を動かさない人間に限って、効率化を叫ぶ一方で仕事を増やすようなことを言い始めます。
 

業務連絡は休み無し?

古い人間の私にとってeメールも煩わしいものの一つです。
eメールが業務連絡の主なツールとなって久しいですが、 かつての連絡手段と言えば、固定電話が主流、資料を急ぎで送りたい場合などにはファックスで、というものでした。当時、どんなに忙しい時期でも、週末や休暇中は緊急の用務以外は連絡しないということが暗黙のルールでした。ですので、休暇中は休暇に専念できたわけです。今は、土日・祝日関係なく仕事関係のメールが舞い込みます。週末のメールは見ないことに決めてしまうのが一番なのでしょうが、私は会社から業務用の携帯電話を貸与されているので、そうも言っていられません。私の周りにも、万が一緊急事態だったらと思い携帯電話を手放せないという人が結構いいます。ここまでくると職業病ですね。連絡手段の進歩により、どこからでも、誰にでも、連絡したいときに連絡できることは便利なように見えて、実際には受け手にとって大きなストレスになっています。会社を一歩出たら仕事のことは忘れる習慣は大切です。私の部では、自分のことはさておき、自分の部下には時間外・週末の不要不急のメール禁止を徹底しています。
 
技術革新によってかえって生きづらい世の中になるのは勘弁してもらいたいですよね。便利になって時間に余裕ができた分は自分の趣味や余暇に使うべきなのです。