和尚さんの水飴

老後の前のハッピーアワー

転職 自分の将来像思い描けるか

突然ですが、今の職場に満足していますか?

もし、現在転職をお考えでしたら、すこしだけお付き合いください。転職先は慎重に選びましょうという話です。

 

就職はキャリアアップの道具?

今年大学4年生の私の娘。果たして就職先は見つかるのかとハラハラしておりましたが、本人はある会社から内定を取り付けると、早々に就職活動を終えました。親が子供の就職に口出しすべきではないと思いつつ、妻も私も娘に、「もっといろいろな会社を見て回った方がいいのでは?」と“アドバイス”しました。ところが、本人は「一生同じ会社に勤めるつもりはない」、「キャリアアップして次を目指すのが大事。会社はスキルを得るための道具」と言って憚りません。娘の周りでもそのような考えが多いのだそうです。今の若者は・・・などと愚痴ると、自分が年を取ったことを認めることになりますが、多くの企業において終身雇用制度が崩壊する一方、若い世代でも最早「会社は永く勤めるところ」ではなくなってしまったようです。

 

一方、ひと昔前は・・・

約30年前、私が就職した頃は、まだ「終身雇用」という言葉が残っていました。私も就職先を考えるときには、定年まで勤めることを前提に会社選びをしました。

私の勤め先では今でも永年勤続表彰という制度が残っており、20年、30年勤め上げた社員には記念品が授与されます。会社として社員の忠誠心に重きを置くことの表れです。

どなたでも一度や二度、会社を辞めたいと思ったことはあるでしょう。私もそうでしたが、一時の感情で決めてはいけないと転職を思い留まり現在に至っています。その根底には、「自分で決めた職業なのだから、天職として最後まで全うすべき」という思いがあったのだと思います。

 

自分の将来像を描けるか

翻って今の職場に目を転じると、若手・中堅社員の自己都合退職の増加が顕著です。私は8年間海外に駐在しており、その間会社に顔を出すのは年に一度の会議くらいで、会社が変わっていく様子を知らずに過ごしてきました。社内報で社員の異動は知らされており、「自己都合退職」という言葉が増えてきていることは承知していましたが、それを実感することはありませんでした。

帰国後に最初に驚かされたのは、若手・中堅社員の激減です。特に中堅どころは、就職氷河期に採用を控え、ただでさえ層が薄くなっている世代。これでは仕事が回りません。これまで中途採用は例外的なものだったのですが、会社は数年前から方向転換を余儀なくされました。しかし、積極的に進めた中途採用にも拘わらず、これもうまく行っているとは必ずしも言えない状況です。折角優秀な人材と思って雇っても長く続かず、数年で辞めていく者が後を絶たないのです。

 

ひと昔前は、自己都合退職を希望するものが現れると、直属の上司や人事部は引き止めに奔走したものです。直属の上司は自分の査定にも響きます。それでも辞めていく者には、「自分勝手」「仕事を投げ出した」などと悪評が社内に流れることになりました。私も若いときからそのような会社の対応を見てきて、「自己都合退職=悪」という考えが刷り込まれていました。また、 私の勤め先はどちらかと言えば、ぬるま湯的な会社です。これまで景気が悪くてもリストラを行わず、ボーナスも減額はあったにしてもゼロになることもない、超保守的・超安定志向の会社。そこを途中で辞めるなんてもったいない。  ・・・と私も少し前までは考えていました。

 

今のように人材の流動性が高まってくると、少子化の影響も相まって、ますます働き手が会社を選ぶ立場になります。会社は有能な人材の確保、引き止めの策を講じなければなりませんが、それができている会社はそう多くないと思います。私の勤め先も例外ではありません。若手・中堅社員、さらには折角即戦力として採用した中途入社社員が、長続きせずに辞めていきます。

何故? 端的に言って、嫌だから辞めていくのです。社内の人間関係や与えられている仕事、自分のキャリアパスに満足していれば、誰も転職など考えません。経営陣が、従業員に対して希望を抱けるような事業構想・計画を示すことができれば、若手・中堅社員も自身の将来像を思い描くことができ、その会社で仕事を続けようという気にもなります。

 

転職先を探すとき、離職率、特に若手・中堅社員の離職率は要注目です。また、面接の際には従業員のキャリア開発にどれだけ熱心に取り組んでいるのか、将来どのようなキャリアパスが用意されているのか、は必ず確認すべき質問事項です。もし面接官が中堅クラスなら、その人が描いている将来像を聞いてみてください。そして、自分自身のその会社での10年後の姿が思い浮かぶか、試してみてください。